おまけ

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おまけ

きっちり二週間。頬にも肉が付き、見違えるように健康的になった裕也を見つめる。 鏡の前、何度も髪をいじり、何度も笑みを浮かべている。頬を引っ張り、あ~あ~、なんて発声練習までしている裕也に笑う。 「笑うなよ」 頬を赤くしながら、上目遣いに睨まれ声を出して笑った。 地味目な黒のスーツを着て、アクセサリーで華やかさを多少演出して、今度は全身を鏡に映してチェックを入れている。 「あ~緊張」 そんな裕也を抱きしめて、頭にキスを落とした。 1からのスタートだから、店の清掃からだと言っていた。大丈夫かと聞いたら、頷いていた。 「なんか、昔のお客にメールしたら…呼んで良いって」 困惑したような裕也の顔に、やっぱり笑ってしまう。 「なら呼べよ」 「いや、1ヶ月は掃除する」 気弱な表情を一瞬で消し、顔を上げた裕也は勝ち気な笑みを浮かべた。 「同僚の手前ね。半年休んだから、半年かけてトップに戻るよ」 頬にキスを落として、出ていく裕也を見送った。 休みの今日は、試作品を作る予定。鼻歌混じりに冷蔵庫を開け、食材を取り出した。 生意気そうな顔をして、時々子どもみたいな笑みを浮かべる裕也を知っていた。 さすがトップは華がある、なんて思いながら章と蜜柑と酒を飲んでいた一年前。裕也は席に付かなかったし、知らないはずだ。 シャドーに来た裕也を見たときは、落ちたんだと思った。 手入れのされていない髪や肌。精気の抜けた瞳。 まあ所詮ホストなんて、浮き沈みの激しい水商売だ。 シャドーを閉め、圭に声をかけたら笑っていた。 「どうかなあ?疲れて休んでるだけじゃないの~?全身から愁い漂わせてたじゃんかあ」 「愁い…そんな色気も何もないだろ?」 肩を竦めたら、圭はケタケタ笑い出した。 「あの子中々フェロモンあるよ~狙っちゃおうかなあ?」 「それはないだろ」 笑い返しながら、翌日来た時に観察してみた。 小さく笑った時に、成る程と思いチラリと圭を見てしまった。
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