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<1・勇者追放>
目蓋の裏に、絶望が焼き付いている。
飛び散った鮮やかな赤。三人それぞれの絶叫。そして、魔王の剣に貫かれてなお、満足そうに笑う彼。
『いいんだよ、これで』
笑っていた。
『だって、これで……世界は平和ってヤツに、なるんだから』
ふざけるな、と思った。何が平和だ。何が良かった、だ。そうやって平和になった世界に、彼がいないのでは何にもならないではないか。
非力な自分では、崩れ落ちる少年の体を受け止める事もできない。血を吐き、頭を掻き毟り、嘆き悲しんだところで何一つ現実は変わらないと知った。
何かを変えたいと願うには、あまりにも遅かったということを。
変えるためには――もっと前の時間で、選択を間違えないようにしなければならなかったのだということを。
それゆえに――魔術師・グレイス=コールドは。
「クソッタレが」
歯軋りし、憎しみのまま運命を見据えるのだ。
「いいぜ、やってやるよ……あいつを救う為に」
それが唯一の正解ならば、やり抜いて見せよう。
例えその結果、家族のように育った親友に――憎まれることになったとしても。
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