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 外は真っ暗。駐車場に向かうまでの道に街灯はほとんどない。  さっそく鷺宮先生に陳情しないと。  早く。  早く、亨。  喜びを伝えたい。分かち合いたい。  足が縺れる。息が上がる。  バン、と車のドアがあく音がして、暗がりの中でも、亨が出てきたのがはっきり分かった。 「亨!」  力強く、叫んだ。 「亨、亨……!」  あれ、おかしい。他に言葉が出てこない。おめでとう、とか、やったな、とか、これからが大変だぞ、とか、もっと他に言うことがあったはずなのに。たくさんたくさん、用意していたはずなのに。 「朱莉さん!」  亨の胸に飛び込む。  事務所に戻ったら、亨は皆の『先生』になる。  だからもう少し。ほんの少しだけ。自分だけの亨でいてほしい。  言葉の前に、感情の前に、ぼろぼろと涙がこぼれ出た。こんな涙なら、いくらでも流したかった。  病めるとき、悲しみのとき、貧しいとき……それだけじゃ、やっぱり、嫌だ。  喜びのときにも、一緒にいたい。  ようやく一緒に、いることができた。                           完
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