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「やっぱり原田さんだ」
ようやく白髪の男から目を離して振り向くと原田は目を輝かせた
「三郎太くん!三郎太くんじゃないか」
「お久しぶりです。もしかして今日の取材の担当者は原田さんだったの?」
「そうなんだよ。よろしく頼むよ」
ずいぶんと偉そうだな、と吉沢が思っていると三郎太は笑顔で
「じゃ、こちらに」
と案内するのを白髪の男が慌てたように
「三郎太様お待ち下さい。取材は断るようにと一朗太様が」
「ふーん」
その言葉に三郎太は笑みを消すと
「広報は僕の担当だよね、兄さんが口出す権利は無いはずだけど、なぜ古谷さんは従っているんだい?」
「…申しわけありません」
古谷は恐縮しながら頭を下げると
「緊急事態だからな。お前に許可を取らずに、すまなかったが。私が判断した」
その言葉と共に黒のスーツに髪をオールバックで、ぴったり固めた派手なマスクをつけた男が後ろから歩いてくる。
「一朗太兄さん!」
吉沢はポカンと、一朗太と呼ばれた男の風体に驚いていると
「どうも、お久しぶりです。一朗太さん、エブリスタ出版の原田です」
なんでもないように原田は握手を求める
「あなたは一年前にいらした…そうでしたか、担当者は、あなたでしたか」
その握手には応えず一朗太は、すぐ後ろにいる黒のスーツに髪をポニーテールした二十歳ぐらいのメガネの女性に書類を渡し
「鮫島くん後で目を通すよ」
そう云ったあと
「すいませんが、お聞きの通り取材の件は、お断りさせていただきます」
「それは困ります。僕らは会社の1大プロジェクトを任せてもらっているんですから」
原田が食いさがると、三郎太も
「僕が受けた仕事だよ。兄さんが、とやかく言う権利は無いはずだ!」
騒ぐ二人に一朗太は目を瞑ると
「ここでは他のお客様に迷惑になる、社長室で話そう…古谷さん、事情を話して他のお客様にも帰ってもらってください、私も後で応援に行きます」
古谷は深々と頭を下げ「かしこまりました」と頷くのを見たあと
「こちらへ」
そう言い一朗太は、くるっと振り向き歩きだした。
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