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オオカミからの手紙
最上階の一室の社長室のなかは、赤い絨毯がひかれ奥には重厚なテーブルがあり、クリーム色の壁には湖をバックに写しだされたモノクロのホテルの写真が幾つか飾られている。
一朗太は中央に置かれたガラステーブルを挟み合ってるソファーの片方に座ると三郎太も不機嫌そうに向かいのソファーに座り、招かれて当然だろうというような顔で原田も、その横にドカッと腰かけた。
吉沢は何とも居心地悪く立っているとメガネの女性の鮫島が
「どうぞ、お座り下さい」
その無機質なクールな言葉に吉沢は恐縮しながら頭を下げ原田の隣に腰かけた。
「原田様、そして…」
自分の顔に視線が送られたことに気づいた吉沢は
「あっカメラマンの吉沢です」
と頭をさげると
「吉沢様、これは他言無用で、お願いしたいのですが…鮫島くん、あれを」
促された鮫島は「はいオーナー」
と一通の手紙を一朗太に差し出し、彼女に「ありがとう」と言うと原田に手渡した。
「お手数ですが、お読みいただけますか?」
原田はフンと鼻を鳴らすと開けてある封筒から一枚の紙を取り出すと大きく開き、吉沢は顔を向け覗きこんだ。
そこには
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我は鬼哭湖に巣食うオオカミ
草に隠れても、木で囲んでも、レンガで防ごうとも
必ずイケニエをいただく
恐れおののけ
九鬼一族を滅するまで我の乾きは止まらぬ
このホテルに血の雨を降らせてみせる
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ワープロで書かれた、その手紙に
「な、なんです!これ…」
吉沢が震えると原田は、すました顔で
「タチが悪いですが、イタズラじゃないですか」
と言うと
「私も最初はそう思いましたが…今月だけで五通も送られてきましてね」
一朗太は呟くように答えると指を祈るように重ねた。
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