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「宛名はありませんね…直接送られたてことですか?」
原田が訪ねると
「ええ、このホテルの郵便受けに」
「警察には?」
「いえ…あまり大事にしたくなかったので、しかし今朝もホテルの郵便受けに投げ込まれていまして、これは何か起こるのではと…お客様にお帰りいただいてる始末でして、なので取材の方は申し訳ありませんが…」
「勝手に決めないでて、言ってるよね」
三郎太は目を強めると一朗太を睨んだ。
「三郎太、この仕事では、お客様の安全が第一だ。もし何かあったらホテルの信用は地に落ちる。今はお客様が安全にお帰りいただくことに力を注ぐべきだ」
「くだらない、ただのイタズラだよ。一朗太兄さんは臆病すぎるよ」
「そうだぜ!兄貴」
その言葉と共に緑のスーツの短髪の男がドアの前に立ち、そのままスタスタと近づいてくる
「客を帰らせ、勝手に団体さんもキャンセルして営業担当の俺の顔を潰す気か」
「次郎太、帰ったか…」
次郎太と呼ばれた男は一朗太の前のソファーの縁にお尻だけ置くと
「こんなんじゃ経営担当は降りてもらった方がいいんじゃねぇか?なあ三郎太」
「確かに、こんな損失を出そうとするようじゃ心配だからね」
フーと息を漏らし一朗太は立ち上がると
「お前たちの言い分はわかった、だが、この件は私に任せてくれないか」
「そら無理だぜ、なあ三郎太」
「そうだねぇ次郎太兄さん。僕たちは共同経営者なんだから、勝手に決められるのはゴメンだよ」
三人の歪み合いに吉沢はオロオロと鮫島を見るが彼女は表情一つ変えずに、その場に留まっていると原田が
「お話中にすいませんが、僕としては、どんな事情があったとしても引き下がるつもりはありませんのであしからず」
そうゆうと鼻歌まじりに笑顔をみせる、彼の空気の読めなさに吉沢は青ざめると
「原田さま、それは…」
一朗太が拳を握ると
「そうだね、取材取材」
三郎太は笑顔で向きなおると次郎太はキッと顔を変え
「取材?オレ抜きでやるつもりだったのかよ」
「広報担当は僕だからね」
「自分がホテルの顔だとでも言う気か?三郎太」
「そらそうだよ。三つ子でも僕の方が見映えからしていいからね」
ケッと次郎太は吐き出すと忌々しく彼を睨みつけた
三つ子だったんだ…吉沢は似てない二人を見たあと仮面の一朗太の顔が気になり、伏し目がちに目で追ってしまうのだった。
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