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九鬼家の一族
「なるほど、つまり祖父の九鬼洋次さんが、このホテルをお作りになったのですね?」
案内された五階のスイートの部屋でメルヘンな作りの4脚の椅子に離れて座る次郎太と三郎太に原田は同じく用意された椅子に腰掛けメモを取りながら質問をする。
「ええ、僕らのお爺さんは、鬼哭湖を観光の目玉にした観光施設を作ろうとしたんですが…
名前がアレなもんで、客足は伸びず、あまり成功したとは言えなかったみたいですけど」
三郎太の説明に原田はウンウンと頷くと
「しかし、お父さまの要造さんがオーナーになり、変わった」
「ああ。親父は最初、次ぐ気は無かったみたいで別な仕事してたんだが、急にホテルで働き出してな。ジジィが亡くなりオーナーになるとホテルの改築を始め、今の六階建てのビルのような作りに壁をレンガにして臼緑の屋根にすると、各部屋には、ひさしを入れず、メルヘンチックなホテルの形にして客の倍増を図り、今じゃカップルに人気のスポットに激変させたわけさ」
次郎太は足を組ながらフッと笑うと三郎太も
「そうだね。前の仕事の時は、ほとんど家にいないで仕事が終わったら好きな絵を書きに遠出して、亡くなった母さんと、よくケンカするような人だったけど、それこそ別人のように変わってね。お客様が倍増しても色々アイデア思いつき必死に頑張ってました。まあ、たまに泊まりがけで絵を書きには行くのは変わらなかったですが」
「フン。余所に子供作って金が入り用でもなったんじゃねえのか?」
次郎太は下品に笑う
吉沢は二人の写真を録りながら
「お父さんは何で亡くなったんです?」
と不意に口にすると
「吉沢くん!質問は僕の仕事だよ」
と原田に睨まれたが
「突然、脳梗塞になってね、ずっと意識も無く病院で3ヶ月も入院してたんだけど、去年ね」
三郎太は吉沢を見ると優しく答えてた
「それで今は御兄弟で」
原田は吉沢にムッと見たあと、笑顔で向き直り質問をした。
「ああ。突然親父が、ああなっちまって遺書も何にも無いんだが、兄貴が経理、俺が営業、三郎太が広報と分担してな」
「なるほどなるほど」
原田はメモを取りながら呟くと三郎太が
「僕としては全て任してもらっても構わないんだけどね」
そう呟いた。
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