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嵐の前の出来事
取材が一通り終わると原田はニコニコ笑い部屋を出ようとしてるなか、吉沢は
「この度は大変な時に、すいません」
と次郎太、三郎太に謝ると
「かまいませんよ、そうだ!次郎太兄さん。今晩泊まってもらったら、どうだろう?」
「そうだな、泊まった感想も書いてもらいたいしな」
「いえいえ、そんな泊まるなんて」
と吉沢が両手を振り断ると
「一理ありますね」
と原田は唸り
「お願いしますか吉沢くん」
こいつ…と原田を睨み
「あのですね、今、ここ大変なんですから、それに着替えもありませんし」
「1日くらい下着なんか変えなくても平気だろ?いいかい吉沢くん、僕らは社運を賭けた一大プロジェクトを任されているんだ、そのくらい我慢しようじゃないか」
原田はウンウンと自分の台詞に酔った顔で頷く。
「いや、迷惑だってことを…」
吉沢が呆れたながら言いかけようとすると
「さすが原田さんだ」
三郎太は原田の肩を持ち
「そうだ、二人の着替えを鮫島さん買ってきてよ」
そう言われた鮫島は
「オーナーに聞いてみないと」
「僕もオーナーだよ!」
三郎太はキッと顔色を変え鮫島を睨むと
「俺もオーナーだよ」
次郎太も割って入った。
「すいません。私は一朗太オーナーに雇ってもらって、いただいたので」
彼女は表情1つ変えずに頭を下げる
「じゃあさ、一朗太兄さんが死んでもしたらどうするんだい?鮫島さん」
三郎太の問いに彼女は
「もちろん、次のオーナーの為に力を注ぎます」
「フッなるほどね。相手が誰だとしても、トップには従うて事だよね」
鮫島の言葉に満足気に頷くと三郎太は
「なら着替えの件、頼むよ。いま一朗太兄さんはいないんだ、ここにいる僕らが判断を下すトップだからね」
「そうだな、鮫島さんよ、頼むぜ」
次郎太もニヤリと笑うと鮫島は
「…かしこまりました」
そう頭を下げた。
「いや、鮫島さん大丈夫ですから」
吉沢が慌てて彼女を制するが、鮫島はペコリと頭を下げると部屋をあとにした。
「さあ、部屋をどうしょうか」
三郎太はパチンと手を叩くと
「どうせ、客は兄貴が全て帰しちまうんだ、好きな所でいいだろ、このスイートでもいいし」
「いやー色んな部屋を見て、もらうべきじゃない?」
二人の兄弟が愉快そうに笑うなか、吉沢は一朗太や鮫島に申し訳なく感じ胸が苦しくなるなか、原田が満足気にいるのに無性に腹が立った。
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