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これまでのあらすじ
本格的な天国系薬物の捜査に乗り出した東雲探偵事務所のメンバー。囮捜査によって天国系薬物の売人を追い詰める深雪たちだったが、突如あらわれた火だるま男によって売人を殺されてしまう。
再び捜査が振り出しに戻った東雲探偵事務所のメンバーは、深雪と親交があるゴーストチーム《ニーズヘッグ》に囮捜査の協力を仰ぐことにする。その調整役として深雪が選ばれたのだった。
狩る側である《死刑執行人(リーパー)》と、狩られる側のゴーストチームの間の溝を埋めようとする深雪の努力の甲斐もあり、《ニーズヘッグ》の共同作戦である囮捜査は成功する。捕らえた売人を車で移送する中、再びあらわれた《イフリート》によって車ごと売人を燃やし尽くされてしまう。去り際、《イフリート》は思いがけず、深雪の名を口にするのだった。
《イフリート》の正体は、かつて《ウロボロス》の仲間だった帯刀火矛威ではないか。そう疑念を抱く深雪だが、所長である東雲六道から「私情を交えるな」と捜査を外れるよう言い渡される。
《イフリート》を追いたいが勝手なことはできないと悩む深雪に、地下から出て来た乙葉マリアがアドバイスをする。己の過去から目を背けず、所長を説得するしか無いと。
覚悟を決めた深雪は、所長と対峙する。自分の第二の能力で《臨界危険領域者(レッドゾーン・ディザスター)》となった帯刀火矛威を人間に戻すこと。もし失敗した場合は親友をこの手で殺す事を条件に、捜査に加わることを許されるのだった。
そして深雪は東雲探偵事務所のメンバーに己の過去を打ち明けるのだった。自分がかつて《ウロボロス》というゴーストチームのナンバー3だったこと。そこで帯刀火矛威と知り合い、親友となったこと。そして自らの手で仲間を殺し、《ウロボロス》を壊滅させた少年Aであること。その後、20年間も《冷凍睡眠(コールドスリープ)》されており、つい半年前に目覚めたことを。
東雲探偵事務所のメンバーは半信半疑であるものの、深雪の言葉を信じるのだった。
改めて帯刀火矛威の捜索に加えるものの、何の手掛かりも得られない深雪の前に現れたのは、怪しげな黒づくめの情報屋・エニグマだった。エニグマから帯刀火矛威の情報と住所を得た深雪は、火矛威に娘がいることを知らされる。
教えられた住所に火矛威は住んでおらず、娘の方から父親の手掛かりを得ようと接触を図る深雪とシロ。しかし、帯刀の娘は友人宅に隠れており、周囲を過度に警戒し、なかなか姿を現さない。深雪が《死刑執行人(リーパー)》だと知り、なおも逃げようとする娘は、深雪にスタンガンを向けてきた。
帯刀の娘・火澄は、父親の火矛威が自分を置いて出ていったこと。アニムスの暴走が激しく、いつ死んでもおかしくないこと。妙な三人組に追われていることを話す。娘の名前から、深雪は彼女の母親が、かつて《ウロボロス》の仲間だった式部真澄ではないかと予想するが、火澄は母親は死んだと聞かされており、不自然なほど何も知らないのだった。
とりあえず火澄を東雲探偵事務所で匿うことになるのだが、深雪は帯刀親子を付け狙い、復讐を誓う少年遭遇する。まだ子どもと見逃す深雪に、奈落は「あれは本気の目だ」と忠告してくる。
父親の身を案じる火澄を元気づけようと話をする深雪だが、突如のある右腕が光り出す。そして何故か火澄の長い袖に隠された両手も、同じように光り出すのだった。火澄のアニムスについて聞き出そうとする深雪だが、火澄は父親から「絶対に人前で使うな」と言われていると口をつぐんでしまう。
神狼の諜報活動により薬物工場と薬物倉庫の情報を得た東雲探偵事務所のメンバーは、さっそく制圧乗り出す。そこで天国系薬物の元売りの正体が、品川一帯を支配地域とする《アラハバキ》の構成員だと判明する。火澄を追っている三人組と、薬物売買の元締めは同じ人物だったのだ。
深雪はエニグマを呼び出すと、《イフリート》である火矛威と薬物売買の元締めを一遍におびき出す方法を思いつく。それは火澄を囮にして、偽の情報を拡散することだった。何故、薬物売買の元締めが火澄を追っているのか。何故、火矛威が娘を置いてまで元売りを殺そうとしているのか。そこまでして守りたい火澄の秘密とは、何なのだろう。
火澄をエサに火矛威と元売り達をいっぺんにおびき出す作戦は成功する。元売り達は《アラハバキ》では落ち目であり、再起をかけるため禁止されている薬物売買に手を出したのだ。だが、監獄都市を混乱に陥れた代償はあまりに大き過ぎる。元売り達は、流星らによって瞬く間に狩られてしまうのだった。
一方、《イフリート》はすでに正気を失いかけ、深雪のことも分からなくなっていた。アニムスの暴走のまま周囲を焼き尽くす《イフリート》に近づくことすらできず、《レナトゥス》で人間に戻すことなど不可能。諦めかけた深雪の前にあらわれたのは、火澄だった。彼女は何故か《レナトゥス》を持っており、深雪と力を合わせて《イフリート》を人間に戻すのだった。
全身に火傷を負いながらも、ようやく人間に戻った火矛威と20年ぶりの言葉を交わす深雪。そして、もう二度と会えないのではと覚悟していた火澄は、父親との再会に感動の涙を流すのだった。しかし、火矛威を救えたと安堵したのも束の間、深雪たちは突如、銃撃を受ける。真っ先に気が付いた火矛威が火澄と深雪をかばったため怪我は無かったが、火矛威は瀕死の重傷を負ってしまう。深雪たちを銃撃してきたのは、帯刀親子に父親を殺されたと恨みを持っていた少年・矢吹仁だった。
少年を追いたいが、まだ息のある火矛威を救うのが先だ。そう言い聞かせ、病院に向かおうとする深雪に、マリアから「すぐこっちに来て欲しい」と連絡が入る。元売り達が妙なことを話しているのだと。すぐさま元売り達の捕縛現場にかけつけた深雪は、そこで衝撃の真実を知らされる。
元売り達が火澄を付け狙っていたのは、彼女は決して結ばれてはいけない2人の間にできた子供だからだと。彼女の母親は《レッド=ドラゴン》の六華主人である紅神獄、そして父親は《アラハバキ》の組総長である轟虎朗児の息子、轟鶴治だと。この事実が露見すれば、監獄都市は大混乱に陥る。その隙を狙ってのし上がるつもりだったのだと。
深雪は元売り達に問う。その情報を流した人物は誰なのかと。すると、彼らは《アラハバキ》の出世頭と目されている構成員、京極鷹臣の名を口にした。それはかつて《ウロボロス》のナンバー2であり、深雪と何度も対立し、あの凄惨な事件を引き起こした、決して赦してはいけない相手だった。
深雪の中ですべての辻褄があう。元売りたちに火澄の情報を流したのも、少年に火矛威を銃撃させたのも、すべては京極の差し金だったのだと。京極は深雪が苦しむ様を見たいのだ。そのためには決して手段を選ばない。
深雪は神狼の案内で《アラハバキ》の居酒屋に乗り込み、京極と20年ぶりの対面を果たす。京極も20年前と変わらぬ姿をしていた。《冷凍睡眠》していた深雪と同じように。そして、深雪は京極に己の覚悟を告げるのだった。
もう二度とお前の好きにはさせない。俺はいつだってお前のことを見ていると。
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