序文

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序文

‪世界の何処かの午后で、猫塚さんは、前脚を巧く使って、お冷やの檸檬水を注ぐ洋盃(グラス)を磨いています。 きゅっきゅっ。 其処は不思議な喫茶店。 優しい春のまぁるい陽射しが、窓硝子越しに猫塚さんを照らします。 にゃ。お客様、いらっしゃいませにゃあ。 独りで、いっぱいの怖い気持ちを押し殺して。 何処にも行けなくて、辛くて、苦しい。 そんな声が聞こえてたにゃ。 猫塚には、聞こえたにゃ。本当にゃよ? だから今日、お客様のとこへ来たにゃ。 猫塚さんは勿論、猫です。 だけれど、どんな猫でもあって、どんな猫でもありません。 やわやわ肉球ドリップで、貴方の為に珈琲をとぽとぽ淹れる、猫なのです。 ご注文はお決まりかにゃ?
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