9人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
立ち合い
扉の中は、外よりも増して切迫感のある空間だった。
全身に布地ーーこれも白いーーを纏った人間が五名、男女混合で、台座を囲むように円を作っている。
それぞれの動作は無駄がなく機敏で、その眼差しは中央に注がれている。
台座の上には女性が一人、横たわっていた。
「あのご婦人が」
「そうです。あの方が祝福される方です」
白装束の輪に近付くが、やはり誰一人、男と青年に気を留めない。
女性が子をなそうとする緊迫した状況だと分かりながらも、不自然なほどに、二人の侵入者は注目を浴びない。
自分達の姿は見えていないのだ、と彼は了得した。
先を歩く青年は医療に携わる人々の間に入り、女性の傍らに立つと静かに微笑んだ。
最初のコメントを投稿しよう!