黒と緑1 [8]

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 ギフト、あるいは超能力、あるいは……呪い。  いろんな言われ方をするけれど、要は不思議な力を持った少女たちが、この学校に集められている。生まれた瞬間にギフトが分かって親元から引き離された子もいるし、ある日突然ギフトに目覚めた子もいる。  翠子さんは、後者だ。  翠子さんは感情が抑えられなくなると、周囲のものを破壊してしまう。まったく手をふれることなく。  とても危険なギフトだから、すぐにこの学校に『収容』された。社会に役立つギフトはさらに役立つように、危険なギフトは封じるように、少女たちはここで『教育』される。  翠子さんは一学年上にあたる。でもギフトとか、適性とか、その他もろもろが考慮されて、寮では玄咲が同室になった。翠子さんはおそらく、友達が、いない。  翠子さんの危険なギフトのせい、というのもあるけれど、一番の原因はその性格だろう。十も下の子がとっくにこの環境に馴染んでいるのに、翠子さんは未だ、無駄な抵抗を続けている。翠子さんはとんでもないお嬢さまで、部屋数が分からないほどのお屋敷に住んでいるから、窮屈な寮生活に馴染めないのだ……とか。将来を約束された許嫁(ユウゴさんと言うらしい)と引き離されたのが耐えられないのだ……とか。そんな作り話を信じるひとはもう、いない。翠子さんが住んでいたのはごく普通のマンションだし、大事そうに手帳に挟んでいた写真はアイドルの写真だった。  嘘ばかりの翠子さん。  けれどその美しさだけは、嘘ではない。
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