アピール合戦

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アピール合戦

 夜中と言ってもいい時間に差し掛かった。  「飲み物も食べ物も、もう少なくなってきましたね。私頼みますよ。何がいいですか?」  ここで気が利く女アピール。こういう細かいアピールも大事にしていきたい。  「ありがとう美菜。普段はガサツなのに、こういう時、気が利くよね」  「普段からこんな感じだよ、秀さんは何飲みますか?」    注文した飲食が届いた。  ここでもアピールは欠かさない。  「有難う御座います」  まずは店員さんにお礼を言う。  しかしその隙に、食べ物もみのりにとられた。  「私取り分けますよ」  くそ! 先取られたか。アピりやがって。  「みのりこそ、普段カップ麺とかコンビニ飯ばっかなのに、こういう時気が利くから、助かるー」  「それは美菜でしょ。よくビール片手に、つまみ食べてるもんね」  黙れよブス  「なんのことだろ? そんなことしたことないんだけどなぁ」  「え、でも先週、夜中にビールとスルメ飲み食いしながら、私に仕事のグチ言ってたじゃん。『やってらんねー』とかなんとか」  「ん? 誰かと間違ってるんじゃない? 先週みのりと電話してないよ。もしかしてみのり、他の人と間違えちゃった?」  「そうかもしれない」  意外にもあっさり認めたな。助かった。  「わたしー、天然なんですよー」  そうきたか、ただ馬鹿なだけだろ。  
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