桜男の修羅

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桜男の修羅

真っ黒な腐葉土の狭間で命は芽吹いた 微生物と養分と水を求めて根を伸ばす 石があり岩があり害虫が巣食う土中で 眠った毒を起こさぬよう警戒しながら 宇宙を彷徨うステルス探査機のように 息を殺し 触覚のような根を這わせる その緻密にして繊細で神聖なる作業を 丁寧に繰り返し 繰り返しては ふと 暗闇の底を徘徊する自らの生きざまに なにゆえの命 なにゆえの厳密さかと 身をゆだねるしかない神の悪戯を嘆き 逆らう手立てすらない真っ直ぐな力で 俺は生きてきた
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