君に捧げる花・あなたに贈る花

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* 「ゼラニウムの花を覚えている晴樹さんに、ご褒美の花束を差し上げましょう」  ふざけた口調で真弧が白のゼラニウムを睦に渡した。 「大きくなりすぎたのを処分したかっただけじゃないの?」 「そうとも言う」  輪ゴムで適当に括られた花は、小学生が道端で積んだようなクオリティだ。晴樹が「なんだこれ」と苦笑いをするのが目に浮かぶ。 「文句言われたら全て真弧さんのせいだからね」 「ぶー。苦情は一切受け付けません」  顔の前で大きなバツを腕で作ってから、真弧は「いってらっしゃい」と手を振った。 「行ってきます。また明日」  後ろを振り返らず、睦はマンションに向かう。歩く度に、真弧のキスを思い出すのは、手の中のゼラニウムの香りのせいだ。  晴樹の奥さんが戻ってきても。弁当を届ける理由がなくても。もう、真弧に会いに行けると思った。  笑顔で手を振る真弧が、いつまでも脳裏に残る。
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