季節のうつろいを

1/4
前へ
/12ページ
次へ

季節のうつろいを

──春は、始まりの季節である。多くの人はそう捉えているのだろう。 事実、自然はおおむねそのようになっている。日差しの温もりを受けることで植物は芽を生やし、生命の循環が始まっていく。 春の植物といえば、桜の花を思い浮かべる人も多いだろう。 だが、ここからが面白い。桜には不思議と、はじまりだけではなく別れを浮かべる人も出てくるのだ。 普段は見向きもしなかった桜の花を、卒業式などのシーズンにだけ感慨深く見つめては、別れと記憶を結びつける。 恐らくはその花びらの美しさ故に、記憶に残りやすいからなのだろう。 つまり春とは、始まりと終わり、出会いと別れという印象が大抵だ。 だが私にとっては、そのどちらでもない。 始まりでも終わりでもなく、ましてやどちらとも、などと言うことはない。 私にとって春など、ただの冬の名残である。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加