終焉を

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「桃太郎なんか、絶対めでたしじゃないですよね。鬼を退治した桃太郎の武力と、人々から巻き上げられたであろう財宝が一箇所に集まっているわけですよね? おまけに家族は老夫婦ときました。  どう考えてもめでたくならないです。鉄と硝煙との匂いが待ってますよ、絶対」 「うんうん。人の事を言えたもんじゃないとわかっているが、君のその捻くれ具合はいっそ心地良いよ」  その言葉はそっくりそのまま返そう。捻くれてるとか、部長にだけは言われたくない。  けれどイメージはできた。実際私は物語というのを、切り取られたように感じる時がある。それは私にとて、まだ話は終わっていないからなのだろう。 「君にとっての終わりというのは、考察が終わったところなのだろう。  どうしてこうなったのか、次はどうなるのか。それを理解することが、きちんと終えられるということ」 「──なるほど。だからあの夢は、とても嫌だったんですかね」  考えられる要因もなく、それを探すことすらできなかった。めでたしめでたし、で締められないわけだ。 「嫌な夢ではあったろうが、こうして分析して少しは役に立ちそうなら、悪いばかりでもないんじゃないかな?」 「そうですね。嫌なものがわかれば、避けることだってできます」  こうしてひとつ、今日も悩みが晴れた。それだけで今日が、いい日だと思えるようになる。
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