季節のうつろいを

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「はぁ。 つまり、どういうつもりなんだね」 部長はどうにも納得がいかない様子で、机に肩肘ついたまま首をかしげている。こちらとしては、どうして理解されないのかと首をかしげたい所だ。 「春って、いきなり春にならないじゃないですか。 えっと……例えば雪です。雪が降るほど寒い冬を抜けて、やがて雪が止む。寒い日から暖かい日へとゆっくり移り、春が来る。さらに先を言うなら、やがて湿度が上がって梅雨になって、雨雲も減ってくれば夏になる。 季節ってただ、そういう流れってだけなんだと思います。だから春は、冬の名残で、梅雨の前触れです」 「ははぁ。つまり君は桜を眺めようとも、紫陽花を眺めようとも、ただその季節なのだと思うだけなのかな?」 部長の言葉は少し抉るようだった。不貞腐れている、と言い換えてもいいものだ。
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