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「暇ですね」
「そうだねぇ」
私は何をするでもなくだらだらと、部長は時々雑誌のページをめくっていた。
時期は梅雨。湿度の高いじめじめとした空気が、しつこく体にまとわりつく季節。
四季折々にはそれぞれなりの楽しみ方があるとは重々承知しているつもりだ。だが梅雨ばかりは、何度経験しようとも楽しみ方というものが、梅雨の風情というものがわからない。
「……部長は本を読んでるから、暇じゃないんじゃないですか?」
しかしそれでも、私のように無為に過ごしているよりは、部長のように読書なり何なりの趣味にでも没頭していた方がいいのだろう。
「暇だからこうして本を読んでいるんじゃないか。暇潰しだよ」
ここで、部長の言葉を聞いて、私の頭のスイッチが入る音がした。
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