暇を

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「……暇、って何なんですかね。部長みたいに暇潰しに本を読んだら、もう暇じゃなくなるんでしょうか」 私の言葉を聞いて、部長も本を閉じた。 面白い──部長は口に出さなかったが、表情ははっきりとそう言っていた。 「では私は今、読書を止めたわけだが。暇になったと思うかね?」 「その代わりに私と話をしているんだから、暇潰しが読書から会話に代わったってだけじゃないですか? 例えばこれが課題をやり始めたのであれば、暇潰しではなくなったのだと思いますけど」 「ほう。でははっきりと言おう、私は今日出された課題をやるつもりはない」 ────は? 「は?」 「私は常に成績優秀と思われることは嫌でね。 より正確に言うなら、いつも百点満点だと思われたくない。もしそうだと思われてしまえば『こいつに任せておけば大丈夫だ』と認識されてしまう。そうなってしまえば、面倒事のオンパレードさ。 そうなる事が嫌だから、私は時々課題をすっぽかしている」 部長が少し変わった人だということは理解してい た。それを嫌だと思ったことはないが、確実に他人とはどこか違っているという事実はある。 それは私にも言えることで、だからこそこうして二人で話すほどに打ち解けられたのだと思っていた。 だけど、それでも言わざるを得なかった。 「いや、おかしいですよ……考えすぎです。それならせめて、わざと間違えるくらいにしましょうよ」 「もちろんそうやって、不自然にならないよう間違えやすい問題系統を記録して統一するという手段もとったさ。それはそれで面倒くさかったのだよ」 わかっていたけれど、この人、変に真面目だな。
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