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「さて、閑話休題はこの辺にして。つまり君は課題ならば暇潰しにならない、と思うわけだ。
だけど私にとっては、課題だって暇潰しだ。調節に使っている。やらねばならない、みたいな義務感とかは一切無い」
「……つまり、本人の裁量次第で暇潰しになるってことですかね?」
必要な事以外は暇なのだとばかり思っていたけれど、そうか。そういう考え方もある、ということか。
部長は実に楽しそうに笑いながら、論じ始める。
「私はそう思うのだよ。
例えば読書は暇潰しとも言えるが、書かれている知識そのものにも意味はあるし、表現手法の勉強ともとれる」
「そう、ですね。勉学であると同時に、さっきの部長のように、ただ暇潰しに読むこともある」
本人が暇潰しだと思えば、暇潰し。本人にとって必要な事であれば、必要な事。
それはきっと、他の事でも同じことだ。私がそう思ったように、部長もそう語った。
「息抜き、休憩だってそうだとも。必要な人もいれば、必要ない人もいる。
だから君にとっての認識そのままでいいのだと思うよ」
「私にとっての認識、ですか」
思えば私は、趣味がほとんどない。読書はたまにするが、それこそ暇潰し程度の感覚だ。寝る間を惜しむほど打ち込むような事は…………
──あった。
「あぁ、なるほど。じゃあ私は今、暇じゃないです。
私、部長とこうして話をするの、毎日楽しみにしていますから。私にとって、必要なことです」
「ふふ、そうかい。私も同じだよ。本を読んでいるより、課題をやるより、君と話をしていることの方が有意義だ」
「……けど部長。やっぱり課題はやりましょうよ」
部長は肩を竦めてから読書に戻った。
課題をやる余裕がなくなるほど、読書に忙しくなったのだろう。
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