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季節のうつろいを
──春は、始まりの季節である。多くの人はそう捉えているのだろう。
事実、自然はおおむねそのようになっている。日差しの温もりを受けることで植物は芽を生やし、生命の循環が始まっていく。
春の植物といえば、桜の花を思い浮かべる人も多いだろう。
だが、ここからが面白い。桜には不思議と、はじまりだけではなく別れを浮かべる人も出てくるのだ。
普段は見向きもしなかった桜の花を、卒業式などのシーズンにだけ感慨深く見つめては、別れと記憶を結びつける。
恐らくはその花びらの美しさ故に、記憶に残りやすいからなのだろう。
つまり春とは、始まりと終わり、出会いと別れという印象が大抵だ。
だが私にとっては、そのどちらでもない。
始まりでも終わりでもなく、ましてやどちらとも、などと言うことはない。
私にとって春など、ただの冬の名残である。
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