第1章

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          暦の恋人は、別れ際に必ず、次に会う約束、学校帰りの寄り道の日程を決めたがった。  暦がハッキリとした日にちを告げずに「今のところは、まだちょっと分からない」と言葉を濁すと、恋人はあからさまに落ち込むものだから、暦が直ぐさま「今日中にラインする」と言って慌てて付け足すと、恋人は安堵したように笑う。  暦はスマートフォンを取り出して、ラインを開いた。  恋人からは、用事があってもなくてもラインが送られてくる。  それはテレビ番組の内容だったり、夕飯が大好物だらけで食べすぎてしまったり、好きな漫画やゲームの話だったりと、他愛のない事柄ばかりではあるのだが、暦は目元を(たる)ませて、口元を(ほころ)ばせながら、どれもこれも嬉しい気持ちで読んでいた。  昨夜も恋人から沢山のラインが送られてきて、暦はどれも二、三通の短文で終わらせてしまった。  何てつまらない文面でしかラインが出来ないのだろうかと、これでは受け取る側も不愉快になるだけではないのかと自認してはいるのだが、性格というものはそう簡単には変えられないし、変わらない。        
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