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暦を駅まで送るついでに、
「せっかくだからさ、イルミネーションとかクリスマスツリーを見ていこうよ!」
と、リョクから意気揚々に誘われて嬉しくなった暦は満面の笑顔で頷いた。
暦の本音も、まだリョクと一緒にいたくて、まだ離れたくはないと、まだ帰りたくはないと切望していたのだ。
リョクからプレゼントされたネックレスの効果だろうか。
いつもなら、こういった雑踏で賑わう場所では消極的になりがちな暦ではあるのだが、今日の暦は少しだけ堂々としている。
「あの……、坂谷君。手を繋いで歩いても良いかな……?」
周囲からの視線など全く気にならないほどに、自分はリョクの恋人なんだと暦は大胆にも主張したくなった。
一瞬、リョクは己の聴覚を疑った。
左右に揺れ動いていた眼球も停止する。
まさか、そんな、嘘だ。有り得ない。
暦のほうからそんな嬉しすぎる言葉を発してくれるだなんてと、浮かれたリョクの心と身体は宙を舞ってしまいたくなるほどに軽くなる。
でも、時にはそんな有り得ないような事が実現されたりもするのだ。
リョクも驚いたが、暦も自ら発した積極的な台詞に驚いていた。
それでも暦の鼓動は落ち着きを払っており、正常に働いている。
「オレも本当は、森島と手を繋いで歩きたいなってずっと思ってたんだ!」
リョクが元気良く暦に手を差し伸べると、寒さで鼻の頭を赤くしていた暦は頬も真っ赤に熱く染めて、はにかみながらリョクの手を取った。
こんなに幸せで良いのだろうかと、リョクは恐くなった。
もしかしたら、この二十四日と二十五日の二日間で一生涯の運気を全て使い果たしてしまったのではないのかと、明日の朝、自分はベッドの上で屍になっているかもしれないなと、リョクは本気でそんなふうに思った。
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