第10章

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     吐き出される吐息は冷気と混じって白く曇り、素肌で繋がれた手は徐々に温もりを増してゆく。  カサカサになった皮膚と唇に反比例して、心は潤い、保湿性を持続させている。  冬の夜の訪れは早くて、気がつけばあっという間に真っ黒な夜空が出来上がる。  それでも、クリスマスの熱気で沸き立つ色彩豊かな街灯が手助けしてくれているおかげで、澄み渡る水色とまではいかないが、見上げた空は淡い藍色に広がっている。  満天の星空よりも眩しくて、イルミネーションよりも光り耀いて、宝石で作られたピアスよりも美しく笑う最愛の恋人が暦の隣にいる。  空から真っ白い雪が降ってきた。  暦の睫毛の先が濡れて綿帽子を被る。  艶やかな雪結晶の粒がリョクの赤髪を一層鮮やかにさせる。  何気なく立ち寄った暖房の利いた喫茶店で、リョクと暦は軽食を摂った。  温かいカプチーノと焼きたてワッフルの上に盛り付けられたフワフワの生クリームが溶けて混ざり合う。  暦の唇に生クリームが付着して、それをリョクにペロリと舐め取られる。  リョクが悪戯っ子なような表情で暦に笑いかける。  往来で賑わうなかでのリョクからの不意打ちに、暦は仏頂面をするどころか過度に赤面させて俯くと、そのまま黙りこんでしまった。       
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