第10章

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      別れ際、駅の改札口へと足を進める暦の姿が人混みに紛れて、段々とリョクから遠退いてゆく。  暦が何度も振り返り、リョクの顔を見つめる。  リョクが名残惜しそうに何度も暦に手を振る。  あと数時間ほどで、クリスマスが終わってしまう。  聖夜に恋の駆け引きをしてみましょうか?  トナカイが引く(そり)に乗って、真っ赤な衣装に身を包んだサンタクロースが運んでくるのは、子供達の夢を袋の中に大量に詰め込んだプレゼントだけとは限らない。  掟破りのサンタクロースになって、この世界中で最も愛するたった一人だけに、この情熱的な想いを届けてはくれないだろうか。届けてほしい。  まだ、帰りたくはない。  まだ、帰したくはない。  もしここで、  君の所に、  オマエの事を、  引き返したならば ――――……。  引き止めたならば ――――……。  帰る or 帰さない。  さあ、どうしましょうか?        
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