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掌の中で泡立てれば泡立てるほどに、それはあっという間に口内で甘く蕩ける美味しい綿菓子のように見える。
そこにそっと軽く息を吹き掛ければ、分散された真珠のネックレスが宙に舞い、各々、散らばっても尚、躍りながら戯れている。
暦の頭皮と身体をマッサージするように洗うリョクの指の動きは厭らしくも非常に繊細で丁寧だ。
脇下、首回り、股の付け根、肘、膝、踵、ふくらはぎ、指の間……。
リョクは洗い残しの部位が一つとしてないように、暦の全身を余すことなく細部まで丹念に洗ってゆく。最後のほうはもはや洗うというよりも磨いているようなかんじになっていた。
リョクのひた向きなお願いに根負けしてしまい、全てを委ねてリョクに任せると決めた暦ではあるが、こうも身体の隅々までリョクの手が行き届くと妙な気分になってしまう。
全身を衣のように纏い付着した泡を全て洗い流すと、リョクは暦に満面の笑顔を向けた。
「はい、これで終わり」
「ありがとう」
感謝の気持ちを伝えた後、暦は気恥ずかしさのあまり、どこに視線を向ければいいのか分からなくて反射的に俯いてしまう。
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