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男性店員の接客は非常に丁寧で、その派手な外見からは想像もつかないほどの素晴らしいものだった。
突然、隣に立たれて話しかけられた事で暦は慌てふためいてしまい、手に取って見ていたアクセサリーを、一旦、元の位置に戻そうとして落としてしまった。
こんなふうに挙動不審にしていれば、まるで暦が万引きを企てていて、それを注意深く監視されているみたいだ。
男性店員は暦が落としたアクセサリーを拾い上げると、気遣いは無用とばかりに暦に目配せをしてアクセサリーを手際良く配置した。
「あ、えっと……、ぼくのじゃなくて、プレゼントなんです」
暦はしどろもどろに答えた後、居心地悪そうに男性店員から視線を外して、自分自身の指先を落ち着きなく粗雑に動かす。
「そうですか。贈る相手は女の人ですか? それとも男の人ですか?」
女と男のどちらかという質問をされただけで、誰にプレゼントするのかと事細かく訊かれた訳ではない。
それなのに、暦は説明しようのないほどに動揺してしまい、心臓は煩いくらいに早鐘を打っている。
「男の人、です……」
やっとの事で絞り出したかのような掠れた声は、けっして悟られたくはない真相を完璧に隠しきれてはいない事を自ら露見しているようなものだ。
暦は何だか気恥ずかしくなり、狼狽えながら俯いてしまった。
「贈る人の年齢はおいくつですか?」
「ぼくと、同い年で……」
徐々に語尾が小さくなり奮える暦を見つめる男性店員が優しい微笑みを浮かべながら頷くと、主に中学生、高校生の年代が身に付けるようなアクセサリーが置いてある場所へと暦を案内してくれた。
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