第1章

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          男性店員は、それ以上、お節介とばかりに暦にしつこく擦り寄る訳でもなく、絶やさぬ営業スマイルで「どうぞ、ごゆっくりと御覧になってください」とだけ言い残して、その場所から静かに退いた。  そして、常連客らしき女性数名から言い寄られている。  どうやら、この男性店員に好意を持つ女性客は沢山いるようで、男性店員目当てに来店してくる女性客も少なくはない。  確かに男性店員をよく見てみると、細身ではあるが、太りすぎず、痩せすぎず、体型は標準的で高身長、それに加えてかなりの容姿端麗だ。  これでは大多数の女性達がほっとくはずもなく、男性店員に魅了されて虜になってしまうのも納得してしまう。  だがしかし、当の本人はあまり興味がないのか、そういった女性客等を当たり障りなく笑顔で適当にあしらうと、何やら急いでお店の外へと出て行き、男性店員の知人らしき人物とお店の外で会話している。  暦は数分間ほど、そこで彫刻像のように立ち尽くして、多種多様なアクセサリーの数々を吟味していたのだが、結局、暦は店内に並んでいるカタログを何冊か手に取っただけで、そのまま雑貨店を出て行ってしまった。        
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