第1章

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          あれから、幾つもの店舗を転々としたが、暦はまだ決められずにいた。  自分の物でさえ、こんなにも頭を悩ました事などはないのにと、暦は困ったように軽く溜め息を吐き、項垂れた。  本人に、何か欲しい物はあるのかと直接訊いてみようか。  いや、そんなふうに訊いてしまったら、もしかしたら逆に気を遣わせてしまうかもしれない。 「何もいらないよ」と、暦を一瞬にして虜にしてしまう、あの魅力的で端整な笑顔で言われる可能性も充分に有り得る。  今日はもう諦めて、来週の休日に出直してこようか。  それか、少し遠いが、また電車に乗り、この場所と同じくらい多種多様な店舗で賑わう大きな駅まで行ってみようか。  いやしかし、こことは別の繁華街に行ってみたは良いが、やっぱりこっちのほうが良かったなとなったりしては困るし、来週の休日に引き延ばしたとしても結局は堂々巡りになってしまいそうだ。        
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