第1章

7/19

404人が本棚に入れています
本棚に追加
/135ページ
          かれこれ、もう三時間以上は歩き回っている。  一旦、どこかで足を休めようかなと、暦はフードコートに座り、着衣していたコートを脱いだ。  暖房が利きすぎているのか、疲労感からきているのか、人々が集まる熱気なのか、その全部なのか、コートを脱いでも薄着になったという感覚はなかった。  普段、暦が飲むのはお茶系統ばかりで、甘ったるいジュースを自ら進んで飲む事はあまりない。  けれども、最も愛する恋人である彼と一緒にいない時には炭酸ジュースを飲むようになった。  今、一緒にいない事の心の寂しさを埋めるかのように、暦は炭酸ジュースを飲む事で恋人を身近に感じていた。  それは単なる自己満足でしかないのかもしれないが、それでも暦は恋人が好んで飲む炭酸ジュースを飲んで、恋人が醸し出す耽美で妖艶な空気に浸りたかった。        
/135ページ

最初のコメントを投稿しよう!

404人が本棚に入れています
本棚に追加