男の金

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 とある部屋の中に2人の男がいる。  2人の顔は同じだ。そっくりというようなレベルではない。同じなのだ。 (世界には同じ顔の人が3人いると言うよな。それでも、服まで同じなのか?)  その部屋にはドアが何故か2つあり、太い柱を挟んで付いている。部屋の中は左右対称だ。  2人の男は同時に別のドアから入り、同時にイスに座った。  そして、2人の男の間に机があり、真ん中に山積みになった金が乗っている。  1人の男は、宝くじで当てた金が何円なのかを数えるところだった。  宝くじの金を取りに行かせたのは別の人だからである。そして、この部屋の机の上に置かせた。  その男は何円を当てたのかも、知らない。  2人の男は金を指差して、同時に口を開いた。 「これは俺の金だ」 「お前の金なわけがないだろうが。これは俺の金だ」  ずっと2人の男は同時に口を開く。  そこに1人の女が、2人のうちの1人の男の近くのドアを開け柱にもたれかかった。 「何してるの?」  2人の男は同時に口を開き、相手の顔を指差した。 「こいつが俺の金を、横取りしようとしているんだ」 「ふーん」  女は考えるような動作をした後、鼻で笑い、離れていった。  また、2人の男は同時に口を開いた。 「これは俺が宝くじで当てた、俺の金だぁぁ!」  2人の男は興奮のあまり、変な顔になっていた。  鼻の穴はぷかぁーっと開き、眉は上手くつり上げられず、微妙で気持ち悪いつり上がり方をし、口角は下がり、そこに誰かがいたなら、笑うか、吐くかするだろう。  案の定、2人の男は怒りだした。 「変な顔で喋るんじゃない‼︎」  男は腕を振り上げた。  もう1人の男はカウンターでもしようというのか、腕を振り上げた。  2人の男の腕は、拳を突き合わせるように進んでいく。  ガシャーン……。  拳が当たり、割れた板の残った部分は男を写し、殴ったところには下から木の板が出てきた。  1人の男が消え、先ほどまでいた女の近くにいた男は呆然とそこに立っていた。  振り上げていた右手はジンジンと痛み、体全体を震わせた。  机は、本物と板に写っていた像がつながり、大きな机になっていたようだ。  つまり、机の真ん中で山積みになっていた金は半分になり、余計な喪失感を生み出した。  半分になった金の上には、光を反射する尖った欠片が乗り、檻のように金を覆っていた。 「まさか、ここは鏡ばりの部屋……」  そして、残った男は増えた金が元の枚数になり、余計に泣くことになった。
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