*10 先生の過去

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俺がゴクリと生唾を飲むんだのを境に、青山さんは糸が途切れたように喋りはじめた。 「私、2人の関係好きだったんですよねー!美男美女だし妄想膨らむっていうか?図書館司書って意外と暇なんですよね。だからずっと2人はどんな関係かって妄想してて、てへへ」 え…っと? 「彼女、先生なんですよね?禁断の愛ですか!?きゃーヤバいですねー!」 待って。 どう言う状況? 「…あの」 さっきまで感じのいい対応をしてくれていた青山さんは、ちょっと変わった人だった。 「はっ!ごめんなさい、今日は館長がいないからつい…。でも今までずっと声をかけよか、悩んで悩んで、我慢してたんです!やっぱり我慢できませんでした、ごめんなさい!」 「いや、それはいんですけど」 「いいんですかー!やっぱり彼女のこと好きなんですかー!?いややっぱ答えないで下さい、知らない方がワクワクするんで、でも聞きたーい!」 青山さんのテンションについていけなくて、自分でもポカンと口が空いているのが分かる。 「あ、今引きましたね?いいんです、もう開き直ってるんで。なに言われても妄想はやめませんから」 って青山さんはにっこりと俺に微笑んで、それが逆に怖かった。 「あの…」 「で、どうします?あなた、学生さんみたいだし、あなたより私の方が圧倒的にこの場所にいる時間長いですからチャンスだと思いません?本当は個人情報的なことなんで、こんな事教えたらダメなんですけど」 青山さんは、俺の喋る間も与えてくれないくらい、すごい量で喋り倒す。 「…じゃあ、なんで教えてくれるんですか?」 「そんなの、もっと楽しい妄想したいからに決まってるじゃないですかー!」 急に青山さんの声が多きくなって、びっくりして焦って周りを見渡す。 「あの、ここ一応図書館ですけど…」 青山さんはそんなのお構いなしって感じで俺を直視した。 確かにこんなチャンスはないかもしれない。 青山さんはポケットからスマホを出して、両手でもちながら待機している。 …この人と連絡先を交換すること自体がリスキーに感じるけど、今はそんなこと言ってられない。 先生に会える確率を増やす方が優先だ。 「私、青山って言います」 「里巳です」 「心配しなくても大丈夫ですよ、あの先生が来た時しか連絡しませんから」 俺は何も言ってないのに、俺の心配事なんて手に取るように分かっているのが怖い。 でもたぶん、悪い人ではないとは思う。 「ありがとうございます、よろしくお願いします」 俺は深々と頭を下げると、 「そんなに好きなんですね…感動してます」 「…はぁ」 俺が顔を上げると、青山さんは自分の両手をギュッと握りしめて、キラキラした目で俺を見ていた。 なんかこの人と喋ると疲れる…。 そう思いながら、その日は図書館を後にした。
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