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「俺、今先生と同じ大学に行ってます」
「…そう」
先生はちゃんと俺の顔を見てくれなくて、それがまた俺を焦らせる。
「先生の昔のこと聞きました」
「うん…」
「だからこの場所に来ました」
「…じゃあ、彼のことも聞いたんだね」
先生はお墓を眺めながら言う。
「はい」
「じゃあ分かったよね?私のことなんてもう放っておいて」
そんなの、
「放っておける訳ないじゃないですか」
先生に手を伸ばすとその手を振り払われる。
「私はまだ彼のことが好きなの!だから帰って」
「彼のことがまだ好きなら!なんで一度でも俺のことを受け入れたんですか!」
「それはっ…」
「先生は彼への罪悪感だけでここにいる」
「違う…」
「違わない」
「なんで私の気持ちを勝手に決めつけるの…!」
だって、そう思ってしまうから。
違うの?先生。
「だったらなんで、俺のこと受け入れたんですか?」
「…あの時は流されただけだから」
「じゃあ、今も流されろよ!いいよ、流されただけでもなんでもいい!もう一回ちゃんと俺のこと見てよ…!」
言っていることがめちゃくちゃだ。
でもそれくらい俺は必死だった。
「ごめん…」
「ねえ、先生。先生が学校を辞めて、先生と会えなかった時間、俺がどんな思いをしてたか知ってますか?」
俺の問いに先生は応えてくれなくて。
「先生に会いたくて会いたくてしょうがなくて、頭がおかしくなりそうでした」
ずっとずっと苦しくて、ずっとずっと会いたかった。
「今でも俺の頭から先生が離れない」
「ごめん…」
「今でも俺っ…「ごめん…」
先生は俺の言葉にかぶせて謝った。
それ以上の言葉を、言わせないようにしているようだった。
「…本当に彼のことがまだ好きなの?」
「うん…」
「もう死んでんのに?」
そう言った瞬間、頬に刺激が走って。
先生に叩かれたことに気づいた。
「もう二度と会いに来ないで。この場所にも絶対!」
俺があっけに取られている間に先生は走り去ってしまった。
俺は最低だ。
あんなこと言うつもりなかったのに。
また先生を傷つけてしまった。
「なんでだよ…」
こんな終わり方ないよ。
先生ごめん。
いつも必死で、訳がわからなくなって。
いつも先生を傷つけてしまう。
こんな事になるなら、会いになんて来なきゃよかった。
俺はあの時のまま何も成長していない。
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