*最終章 本当の気持ち

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*** 4月21日(木) 今日は、あの人が好きだった本をもう一度読もうと思って、久しぶりにあの図書館へ行った。 だけど、その本はどこを探しても見つからなかった。 諦めて帰ろうと思った時に、あの本を読んでる男の子が目に入った。 すごく驚いた。 彼が生きていた、って一瞬錯覚した。 でもよく見ると全然違う人だった。 生きているはずなんてないのは分かってるのに、図書館であの本を読んでる男の子が彼と重なって見えた。 *** そこまで読んで本を閉じた。 やっぱり日記だ。 心臓がドキドキと音を立てているのが分かる。 そのめくれていたページには、俺と初めて会った時のことが書いてあって。 前に、先生が話してくれた言葉を思い返す。 読んじゃまずいよなって思って片付けようとしているところに、先生が帰ってきた。 「そんなところで何してんの?」 先生の声にハッとして、片付けようと思っていた日記を落としてしまった。 「ごめん、ちょっとだけ見ちゃった…」 言い訳できないと思って素直に謝ると、そのまま日記を拾い上げる先生。 先生はその日記を俺に渡した。 「いいよ、読んでも」 「え、」 驚いている俺を横目に、 「いい匂い」 って言って先生はキッチンに向かって行ってしまった。 俺は戸惑いながらも、日記を開いた。 *** 6月6日(月) 今日は臨時で決まった学校に初出勤。 すごく緊張した。 でも受け持つことになったクラスの子たちはみんないい子そうで安心。 改めて頑張ろうって思った。 そして、驚いたことに図書館で会った男の子がそのクラスにいた。 こんな事ってあるんだって思った。 もしかしてと思って放課後図書館に行くと、その男の子はまた、あの人が好きだった本を読んでいた。 なんとも言えない感情が込み上げてきた。 6月14日(火) 授業の資料作りに図書館に通う日が増えた。 図書館に行くといつも里巳くんがいた。 里巳くんと一緒にいる時間は不思議と心が落ち着く。 なんでだろう。 6月20日(月) 今日は赴任して初めての野外活動。 里巳くんが倒れた時は、本当に心臓が止まりそうになるくらい胸が詰まった。 なんか、里巳くんから目が離せない。 車で名前を呼ばれて、”愛してる”って言われて。 一瞬でもドキッとしたのは、びっくりしただけだよね。 冗談って分かってホッとした。 6月15日(火) 里巳くんが学校へ来ていた。 朝ご飯も食べてきてなかった様子で。 また倒れたりするのは絶対いやだから、無理やり食べさせちゃったけど大丈夫だったかな。 7月1日(金) 里巳くんが女の子に告白されているのを目撃してしまった。 よく女子生徒から里巳くんはかっこいいって噂を聞く。 モテるのも納得の容姿。 里巳くんはいつも放課後図書館にいるけど、彼女とかいないのかな。 なんか、ふしぎな子。
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