*最終章 本当の気持ち

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7月20日(水) 今日は三者面談初日ですごく緊張した。 親御さんと話すのは生徒と話すより緊張する。 里巳くんのご両親が海外にいると初めて知った。 担任失格だな。 ちゃんと里巳くんのこと見てないとなって思った。 7月29日(金) 夏休み中も里巳くんは私の行く時間にはいつも図書館にいた。 私が勧めた本もおもしろいって言って読んでくれて。 里巳くんは授業もちゃんと聞いてくれるし、見た目は遊んでそうに見えるけど、本が好きな真面目な子なんだなって思った。 8月1日(月) 今日は図書館に里巳くんが来なかった。 珍しい。 1回倒れたことがあったから、少し胸騒ぎがした。 何かあったんじゃないかって心配になった。 8月9日(火) 8月になってから里巳くんは図書館に来なくなった。 どうしたんだろう。 なんか、今まで里巳くんがいるのが当たり前だって思っていた自分に、少し怖くなった。 9月1日(木) 学校に行くと、里巳くんはちゃんと学校に来ていて安心した。 私の考えすぎだ。 でも何で図書館に来なくなったんだろう。 気になる。 10月13日(木) 明日はあの人の命日。 この日が近づくと、どうしても彼のことを思い出してしまう。 あの時、なんで約束なんてしたんだろう。 雨がすごいから、会うのはまた今度にしようって、なんで言えなかったんだろう。 10月14日(金) あの人の命日。 今日は1日中ぼーっとしていて、普段やらないミスばっかりした。 放課後、ぼんやりと学校の外を眺めていると、里巳くんが女の子と歩いているところが見えて。 あー、やっぱり彼女ができたのかって、なぜか泣きそうになった。 仕事が終わってから図書館に行くと、ずっといなかった里巳くんがいて、胸が詰まりそうになった。 なんなんだろう、この感覚。 里巳くんは私が元気ないのを気付いてくれていたみたいで、気にかけてくれていた。 両親が帰ってこなくて寂しいって言ってたけど、もしかしたら私の気持ちを察して一緒にいてくれてるのかなとも思った。 里巳くんの優しさがじんわりと心に滲んだ。 図書館を出るとすごい雨で、雷が鳴った。 あの人と最後に会ったのも雷が鳴る荒れた日だったから、その日から雷が苦手だった。 里巳くんが私の手を引いて一緒に走ってくれた。 びしょ濡れになりながら、雷におびえる私を気にかけてくれて、うれしかった。 すごく、ドキドキした。 でもまさかキスされるなんて思ってもいなくて。 毎日のように図書館にいた里巳くん。 ”愛してるよ”って言ってくれた里巳くん。 ”先生に告白されたら付き合います”って言った里巳くん。 全部全部冗談だと思って受け流してた。 でも今日やっと気が付いたんだ。 だからもう彼の優しさに甘えるわけにはいかないって思った。
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