Jinx

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「はぁー、(つっか)れたぁ…」 笑いあり、涙ありの披露宴の後― ジェットコースターのような1日がやっと終わり、私はドレス下のパニエだけ脱ぎ捨てて、控室のソファーにドレス姿のままの体を投げ出した。 うわっ。 何このソファ。 バタバタして気付かなかったけど、これ、よく見たらイタリアの高級家具メーカー製じゃない。 どおりで全身を包み込むような心地良さ。 一日の疲労が、更にそれを増長させる。 ああ、至福…。 と一人浸っていると、ノックもなしにすごい勢いでドアが開いた。 入ってきたのは、白いタキシード姿には似つかわしくない顔をした桐嶋だった。 「…セーフ」 「と、冬馬?どうしたの?そんなに血相変えて」 と、私が言い終える前に、『ガチャン』と鍵のかかる音。 嫌な予感しかしない。 「な、何がセーフ?」 「依子がまだドレス(それ)脱いでなくて」 「ま、まさかここで!?」 「当たり前だろ。男のロマンだ」 絶対にそんなキメ顔で言うセリフじゃないと思う。 口に出してみても、アイボリーのペルシャ絨毯の上をこちらに向かって進む足は止まらない。 「じょ、冗談止めてよ!!」 慌てて身を起こして逃げようとしても、もう遅かった。
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