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圭介が連れ出した場所は海だった。
これまで、まともに圭介と一緒に外に出かけたことはなかった。
2人でいるところを誰にも見られるわけにはいかなかったから。
「芽衣になんて言って出てきたの」
「芽衣が言い出したんだよ、ちゃんとお別れしておいでって」
芽衣は圭介の裏切り行為に気付いてはいたが、その相手がつかさであることには少しも気付いていないようだった。
「相手がどんな女だとかなんとか、聞かれなかったの?」
「何も聞かれてない。ただ、相手の女には腹が立つけど、電話やメールだけでお別れするのはあまりにも失礼だって」
つかさは沈黙する。
嘘だ、と思う。
そんなのは芽衣の本心じゃない、ただの強がりだと。
浮気されて自分だってボロボロのくせに、浮気相手に同情する余裕なんてないくせに。
「今頃いてもたってもいられないだろうね…」
意味もなく家の中を歩き回る芽衣の姿が目に浮かぶ。
心がチクリと痛んだ。
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