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「魔瘴風…」  聞き覚えのない単語に首をかしげると、 水晶――通信珠の向こうにいる義兄が「そうそう」と頷く。 これは誰しもが知っていることなのか――と思って顔を上げてみれば、 前から通信珠を覗き込んでいた二人の精霊(おとこ)たちが私の視線に気づいて、方や首を振り、方や首を傾げた。  人間よりも遥かに長い時間を生きる精霊の二人ですら知り得ない事象。 これは相当に切迫した状況なのか――と義兄に問えば、 義兄は「放っておけばね」と至極当然の答えを返してくる。 …でも、こんな返しができるということは、 事態は一分一秒を争うほど深刻な状況ではないんだろう。 「マーリンが言うには、前回対処したのはじーさまなんだと。 で、じーさまのことだから、その時のことは記録してあるだろう――とさ」 「…なるほど――…、……だけど、マーリンさんじゃダメ、なの?」
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