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季節ネタ バレンタイン01
~ 少し前の話 ※完全な実話 ~
明日は世間ではバレンタインデーとか言う、女性が男性にチョコレートを贈って告白やら日頃の感謝の気持ちを伝える日、なんて言われてるけど
此処に来て半月ぐらい監禁されてる私には無関係な話
妊活をしたがる隆一を回避しながら過ごしてる為に彼自身はそれ以外の事には興味なさそう
『( バレンタインだとしても、チョコレート作る材料とか無いんだけどね…… )』
猫と身一つでやって来た為にお金など持ってないし、外出許可は出されてない
まぁ、出なくてもいいから平気だと思ってる
今日は遅くなるとスマホに連絡が入っていた
いつもなら、十九時頃に帰ってくるのだがまだ二十一時を過ぎても帰ってきてない
嗚呼、このままバレンタインがやって来ていつものように一日が過ぎるんだろうなって思っていれば、玄関の扉が開く音が聞こえてきた
『 ……おかえり 』
旦那さんだし、挨拶だけはしよって思いソファーから下りて、リビングから通路の方へと視線を向ければ、彼は私を見るなり答えた
「 ただいま、少しドライブに付き合え 」
『 へ? 』
また急に身勝手な事を言う人だ
散々、外に出すのを嫌がってたのにドライブに付き合え?
いや、その前に仕事終わりなんじゃ…と気になる
『 仕事終わりでしょ? 』
「 嗚呼、だから気晴らしにドライブに行くんだ。その格好に上着でも羽織れ。俺も着替えたらすぐに行く 」
『 あ、うん…… 』
大丈夫なのだろうか?昨日は夜遅くまで調べものして起きてたみたいだし
睡眠時間が短いのも知ってる
その状態で運転なんて…と、事故りたくない私の身を守りたくなり心配するまま、取り敢えず上下揃ったジャージの上から上着を着ることにした
着替えたら、と言ったから直ぐなのかと思えばシャワーを浴びに行ったのを見て遅くなると分かる
『( じゃ、待つかな…… )』
暇潰し用のスマホを片手に、上着をきたままソファーに座り待っていれば、三十分程で風呂から上がり軽くドライヤーで髪を乾かし、普段着であるVネックのシャツに黒いジャケットを羽織り、ロングコートを着てはやって来た
髪を整えるのが面倒みたいに、前髪を掻き上げたまま、バック上げみたいに見える外見
「 待たせた……行くぞ。嗚呼、クロに餌やったか? 」
『 やり終わってる 』
じゃいいか、と納得し財布、スマホ、車のキーを持って玄関に行く隆一についていく
クロの餌を気にするほど、ドライブは時間かかるのだろうか?
お風呂上がりでノーメイクだし、ほぼ寝間着なんだけど、と思いながら久々に玄関を出て通路に行く
余り話すこと無く、只一歩後ろを着いていき一階までエレベーターで降り、車がある駐車場へと行けば高級車には見えなくて大きめのシルバーの普通車
家族用にも見えるそれへと乗るのを見て、そそくさ助手席へと座ればシートベルトをつける
『 こんな車も持ってたんだ…… 』
「 最近、買ったけどな 」
『 ……最近。家族が増えるとかで? 』
エンジンを付け走り出した彼へと問い掛ける
隆一の運転は今回が初めてで、少しドキドキすると思いながら、嫌な予感に問えば彼は口角を上げた
「 当たり前だろ?見た目だけの車なんて通勤用でいい 」
『 ……気が早い 』
流石に家族が増える事を予測して、新しい車を買うなんてちょっと引くよ
それにサラッと高級車はやっぱり見た目だけの通勤用なんだ
確かにあんなのでウロウロされたら、庶民的である私を見た人は驚くだろ
うん、無理はない、と頷いていた
『 そう言えば、どこ行くの? 』
明らかに行き先は県外っぽい、市内をウロウロすらこと無く一直線で外に出るための道を行ってるのは、道路標札を見て分かる
ちょっとだけ気になって問えば、左手を下ろし片手でカーナビを触れば、地図にして答えた
「 日本海側に行く予定だ 」
『 随分とアバウトな……というか今から? 』
「 片道三時間ぐらいだろ 」
『 うわぁ……突発的な…… 』
片道三時間、サラッと言うけどそれだけ運転するって凄くないかな
高速道路に乗るのかは分からないけど、カーナビを弄ってた手を止めれば、答えた
「 ドライブと言ったろ。CD色々ある。好きなのつけていい 」
『 やった……。何があるかなー 』
「 御前が好きだと言ってた歌い手とかある 」
なにその、嫉妬するかな?と思ってサラッと誰々が好きなんて言ってた一言程度を覚えてるなんて
本体のみが何枚も入ったCDケースのファスナーを開け暗いために、スマホをかざして見ていく
色々見ていればジャンルはバラバラだけど、確かに数はあり、好きな男性の歌い手のCDを見つけ入れる
『 ナビは?行き先とか……日本海って言っても道順あるし 』
「 指示されるの嫌なんだ。勘で行く 」
『 ……行ったことは… 』
「 ない 」
無い方面をナビ無しで行こうとしてる隆一に、本当に突発的に考えて車を走らせてるのだと知る
ちょっとだけ冷たい目を向けて、外に視線をやれば夜景がある都会から離れていく
うん、高速道路とか自動車専用道路を行くこと無く山道へと入るのを見て、突っ切るんだな……
「 コンビニに寄る、飲み物買うぞ。トイレも済ませとけよ 」
『 はーい 』
曲を聞きながら、山道へと行く前にコンビニへと立ち寄る
此所が、最後のお店でありコンビニだとはこの時の私は知らなかった
車から下りて背伸びをしてから、早々にトイレをお借りして飲み物を選ぶ
お茶でいいやってガラスの前に立って見ていれば、同じく終わらせてきた彼は隣に立つ
「 ……これにするか 」
『 私はお茶!会計、よろしく! 』
「 嗚呼、菓子か食い物でも選べ 」
『 やった、お菓子にしよ 』
選んだペットボトル持ち、お菓子コーナーへと一緒に行き選んでいく
チョコレートがいいかな、とか思っていればカゴを持ってきた彼は、トッポやらポッキーやら値段とか数とか気にせず入れて行く
『 えっ……? 』
「 食えるだろ? 」
『 食べれるけど……私もチョコレート買おうとしてた 』
「 なら、これでいいな 」
まさかバレンタインって知って!?なんて期待したけど、本当に中身の数があって食べやすいのを選んだだけだった
なんだよ、ちょっと期待したじゃん
小銭を持ちたくない系の隆一は、カードで支払ってから袋を持ち車の中へと戻った
手元にあるペットボトルを置く場所にセットして、彼が大量買いした細いポッキーの袋を開ければ車はまた進む
普通なら灰皿を置きそうな場所に、ポッキーの袋をセットしてる隆一は一つ取り片手で運転しながらゆっくり食べてるのを見て
余り、市販のお菓子って食べないイメージがあったから意外だと見つめる
「 ……なんだ? 」
『 なんでもー。美味しい? 』
「 嗚呼…… 」
反応が薄いのを見れば、好きなわけじゃ無いんだ
只、口に入ればいいって感じだと分かり苦笑いは漏れる
『 それにしても、山道に入っていくね。曲がりカードが多い 』
「 ふっ、曲がりカーブだろ?カードってなんだよ 」
『 間違えただけだし! 』
「 眠いんだろ?寝ていいぞ 」
『 眠くないし! 』
くねくね左右に動く山道に早三十分以上揺られてるから、言葉も可笑しくなるもの
運転は上手いみたいだけど、運転になれてない私からすると怖くてドキドキする
「 そうか。この辺りは霧が濃いな 」
『 だよね、凄い霧……見える? 』
「 全く見えねぇから、時速四十キロ……もないな。動物が飛び出すかも知れないし 」
対向車もやってこないぐらい、山道に入ったことで霧は濃くなり直ぐ前すら見えない
寧ろよく運転できると思っていれば、動物の話になり驚く
『 嫌だよ!?ペット飼ってるのに、動物轢くなんて 』
「 俺だって嫌だ。だから気を付けてんだろ 」
『 うん!ノロノロでいいから気をつけて。野生動物……何が出てくるんだろ 』
めっちゃ遅くてもいいって頷いて自分の窓ガラスの方へと視線をやれば、僅かに車が揺らいだことに驚いた
「 今のは……ウサギか 」
『 ウサギ!?ウサギいたの!? 』
「 茶色い野ウサギだった。生きてたぞ 」
『 ……野生動物の時間だ 』
「 そうだな、零時を過ぎたから出るだろ 」
見たかったと振り返っても見れるわけもなく、でもこの野ウサギをきっかけ、というか動物が出現する時間らしく、他にも現れていく
まるでゆっくり運転しろってばかりに……
『 タヌキとか…猫とかいそう 』
「 鹿がいるぞ 」
『 鹿!? 』
「 右だ、ばか……そっちは左だ 」
『 えっ!? 』
首を向けて野生の鹿!と喜んでも、既に通りすぎたから見えなくて
前へと向いていれば対向車へと、隆一はパッシングした
どうやら対向車側にいたんだろ
「 御前が、左右盲なのを忘れてた…ハンドル側って言えばよかったな…… 」
『 つ、次そうして!というか…なんでパッシングしたの? 』
「 嗚呼、向こう側の真ん中に動物がいたから気を付けろ。と合図したが…彼奴なに?って思われた程度だろうな 」
意外に、他の車にも教えるんだーって思ってもふっと考えてことに青ざめる
『 ……もし分からなかったら 』
「 今頃、鹿と衝突して事故ってるな 」
『 …………忘れよう 』
事故ってるなんて見たくないし、聞きたくない、それに背後で大きな音は聞こえなかったと思うと頷き、出来るだけ考えるのを止めようとしても
気になるらしい、隆一は呟く
「 次来たのがトラックだったからな……鹿が動いてなかったら轢くか… 」
『 あ、でも……昔、お爺ちゃんが轢かれた猪の情報得て。取りに行ったことあるよ 』
「 そうなのか? 」
ふっと、事故った野生の動物の事を思い出して懐かしい記憶を思い出しながら答えた
『 そそ、私がまだ五歳頃だったけど、大きな雌猪でね。車で取りに行ってトランクにつんで実家の倉庫で捌いて、食べたよ!お腹の赤ちゃんも! 』
「 ……それは旨いのか? 」
『 新鮮なジビエ肉だからね。お爺ちゃん猟師だったし。捌くやり方知ってて、私はジビエ肉好きだよ 』
猪鍋にして食べたと言えば、隆一はポッキーを咥えてから少し考える素振りを見せ、納得したように頷く
「 死んで放置されるより……食った方がいいか… 」
『 多分ね!だから、あの鹿さんは近所の人が見つければきっと食べるよ 』
「 ……そう、思っている 」
合掌と手を合わせてから、ジビエ肉として食べられたと思う鹿さんを考えてから
少しだけ、他愛ない会話をする
この山道だけで鹿を五頭見掛けて、二人でテンションは上がっていた
まるでサファリに入ってるように……
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