六話 暇潰しの物が欲しい

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六話 暇潰しの物が欲しい

隆一がいなくて、暇な一日は始まる クロと遊べるようなオモチャは持ってきてないし、スマホの充電器さえ忘れてスマホの充電はカスカス 小説の続きも読めない事に既に気力はゼロ 今日中に、服やら物やら届くと言ってたが、きっと玄関に放置されて残りはあの人が帰ってきてから部屋に入れるのだろうね 『 はぁ……スマホがないとこんなにも時間潰せないとか…… 』 首元に触れ寝てる間に付けられたらしいチョーカーの感覚に眉を寄せ、部屋を恐る恐る探検してるクロを放置してリビングからカーテンを開き外を眺める 『 わっ……景色いい…… 』 何処のマンションかは分からなかったけど、それなりに坂道の上に有るらしく見える景色に笑みは溢れる 此処なら排気ガスが臭くないのに、見渡せる… 『 こんな…生活をくれる人がいるなんて…… 』 子供を産むことは賛成できないけど、他の事なら問題ない 家事が出来ないのは申し訳ないが、下手だからするなと当たり前の事を言われたら最もだ 『 にしても……暇だなぁ…… 』 時間を見てそれなりに暇を潰そうか考えるも、部屋にTVはない 漫画本や難しそうな本すらない、家具だけ置かれている 何か面白いものは無いかなーと家具を開けたり、他の物を見ても、あるのは隆一の着替え程度が寝室のクローゼットにあるぐらい 『 本当、私のがない!!あ、洗濯! 』 洗濯終わらせてあるなら、下着あるじゃん!!と喜んでドラム式洗濯機がある風呂場の方へと行き 中をパカッと開く 『 ……ん?無いぞ? 』 あれ、下着がない…… 寧ろ洗濯すら無いと傾げて目についたゴミ箱を見付けて、蓋を開ける 『 あ…… 』 見付けた、黒いビニール袋を、きっと中身は下着だろうなってゴミ箱探って見れば身体は一瞬停止する 『 ……見なかったことにしよ 』 何故捨てたのか分かる、汚れが取れなかったんだ よっぽど嫌だったんだなって思い下着は諦めて脱衣場から離れ、リビングへと戻る キッチンに行き、ゴミ箱を覗けばちゃんと分別されて捨てられてる 『 へぇ……てか、ジャガイモとか上手く剥いてる…… 』 どのぐらい上手く使ったか見たいのは貧乏人の性であり、生ゴミを探るのを止めて手を洗ってから冷蔵庫を見る 『 いつの間にこんな揃えたんだ…… 』 調味料含めてずらっと並び、聞いてた通りにタッパーにおかずの残りが入ってる 牛乳あるし、飲んでいいかなーと考えていればスマホではない別の着信音が鳴る 『 えっ、なに!?こわっ!? 』 どこから鳴るの!?変なブザーでも押した!?と焦り、音がする方を探れば殆ど置かれてない棚の上にある、見知らぬスマホ こわっ!!と思いながらも画面には"旦那様から" とか書かれている 『 本人が設定したなら気持ち悪……はい、もしもし? 』 " やっと出たか。次から三コール以内にとれ " 声の主は旦那様である隆一から やっぱりちょっと不機嫌そうと思い耳に当てては聞く 『 分かったけど…着信音不気味すぎる…。地震警報かと思ったじゃん 』 " 知るか、初期化してるから好きに着信いじれ " 『 えー、じゃ…旦那様からって設定したの誰? 』 " は?俺じゃないが…そのスマホを渡した部下の誰かだろ。夫からに変更しとけ " 『 似たようなものじゃ 』 着信音は警報みたいな音で、旦那様からって書いたのも部下なのか 相当趣味がないと思い聞けば、告げられる " 今日からそれが御前のスマホだ。好きに使え。嗚呼…メールがあるだろ?欲しいものは分かりやすく送信すれば買って帰る " 『 分かったよ……きっと、検索履歴とかそっちに分かるんだろうね 』 " ちょっとは賢くなったようだな?因みに部屋にある三十ヶ所の隠しカメラを把握できたらいいな " 『 はぁ!!? 』 えっ、隠しカメラなんてあったの!? だからタイミングよく通話がかかってきたの? マジでこの人怖すぎると振り返り、カメラが有りそうなところを見て動く " しゃがむのはいいが、丸見えだぞ " 『 変態!パンツ買ってきて!Lだから!Mみたいな可愛いお尻してないから! 』 " 胸はMだろ " 『 ……黙れや 』 悪かったな、Bカップだよ Aでもいけそうだと思うぐらいスポーツブラで十分な胸なんだよ だからパット付きのタンクトップが使いやすくて好きなのに、酷すぎると思えば本人は通話越しに笑っていた " 冷蔵庫の牛乳は好きに飲め。紅茶と珈琲もある " 『 麦茶か水が欲しい……水道水でいいけど 』 " お茶か……ペットボトル買って帰る " 『 ありがとう! 』 水道水の事はスルーなんだ?まぁね、こういう人は飲まないよね? 私は全然、浄水器が付いてたら飲めるんだけど… 普通に御礼を告げれば、彼は軽く笑う " 昼飯は食えよ。俺と同じ弁当だ。レンジで温める位分かるだろ? " 『 分かるよ!じゃ……お仕事頑張って! 』 " 嗚呼、頑張るよ。御前の姿見ながら " 隠しカメラ見付けたらいいってことは壊してもいいんだね?よし、頑張ろって思い スマホを消しては目についた充電器コードを掴んで引っ張るも、固定されて抜けない! 充電するならここだけって!?分かったよ!! 『 はぁ……監視、監禁…ご飯が有るだけマシかな…… 』 余り変にしゃがむのは止めようと、時間を見て昼御飯の為に冷蔵庫を開け昼飯用と書かれたメモ用紙が貼られた弁当を取り 中身を確認してから、レンジで温める 『 きっと割り箸だろうな……置いてあるし 』 レンジの横に、容器に入った割り箸があり これっぽいから一本持ち、あたためが終わり弁当を持ってダイニングテーブルに置き 『 牛乳~、牛乳~ 』 紙コップに牛乳入れて、持ってきては座り両手を合わせる 『 頂きます! 』 長細いお弁当箱を開けて二段になってるのに気付く そして一番下は二つはいってる十六穀米のおにぎりだ 『 隆一が握ったの?はあぁ~……何でもするんだ 』 もっとご飯が入った程度かと思ったらちゃんとある 朝御飯の残りはそんなくて、唐揚げとか甘めの玉子焼き、ミニトマトや野菜まで食べ終えれば満腹感のある昼御飯に満足する 『 ご馳走さま…… 』 両手を合わせ、燃えるゴミ箱に割り箸と紙コップを入れ、お弁当箱を軽く洗い食器洗い機に置くだけ スイッチの仕方が分からないし、いいよね…と自己満足する さてさて、何をしようか 隠しカメラ探すのも疲れそうだし、とりあえずスマホ弄るから嬉しいとスマホを持ちリビングのソファーに横になり、動画を開く 『 …そう言えば、赤ちゃんって…どうやって出来るのかな…… 』 保健の授業で習ったけど、改めて思い出すとよくわからないもの 検索履歴とかどうでもよくなり、赤ちゃんが腹の中で成長していくCG動画を見る 精子と卵子が出会うような話から、お腹の周期で大きくなって行く様子 そして双子なら腹の大きさは倍ってことも知れば、何気無く自分のお腹を触ってた 『 つまり、中出しセックスすれば……運よくなるのか…… 』 自分の生理前は何日だっただろうか、 と日付を見ればもう一週間位で周期が変わらなければ始まる その辺りに生理が来なければ妊娠したかもしれない 不安になる感覚にスマホを置き、腹を抱えて身体を丸める 『 妊娠……したくない…… 』 怖くて仕方無い、だから嫌だと負担になる 好きな人ならいい……なのに、産むだけに結婚させられた相手なら嫌に決まってる 涙目になる感覚と共に眠りについた 夕暮れに、音を変えたスマホの着信音が聞こえ手を伸ばし耳へと当てる 『 もしもし……? 』 " 今から帰る。何か欲しいものは無いか? " 『 ……お茶と下着ぐらい… 』 " 分かった " そう言って電源を切った彼に、もう一度丸まっていればクロの鳴き声に顔を向ける 『 クロ……。おいで…… 』 おすわりしてるクロに、身体を起こし脇を抱き上げお尻を支えるように抱き締めれば、その頭へと鼻先を当てる 『 ……なんで、こんなことになったんだろ…。クロ、家に帰りたいね…… 』 まだ丸一日此処にいるだけなのに、帰りたくて仕方無い でも母親の様子から見て、此処に居た方が嬉しいに決まってる 情緒不安定だとばかりに、目から溢れ出て雫は頬に落ちる 家に帰ってきた、隆一に気付いたけど寝室から動く気が無い 仕事から疲れて帰ってきたのに、お帰りとも言えないで妊娠動画を見て病んでるなんて笑えない 「 ……ルイ、晩飯食わないのか? 」 『 ………… 』 「 ……そんなに、妊娠するの嫌か? 」 検索履歴を見たなら、そこからずっと不機嫌なのも知ってるはず 口を閉じたままクッションに顔を埋めたままの私に、彼は溜め息を吐き近付いた来た サイドテーブルの引き出しを開け、何かを取り出す音は薬のよう なんだろう?かと視線を向ければ、それを一つ手に取りベッドに腰を下ろしては私の肩に触れ無理矢理、仰向きにさせた 「 ……そんなに嫌なら、今回は無しだ…。御前が望まない妊娠は、俺も嫌に決まってるだろ 」 『 っ…なんの薬!? 』 「 避妊薬だ。ピルだと言えば分かるか?飲め……三日以内なら妊娠しててもまだ間に合う 」 錠剤を向けてきた彼に、私はどうすればいいのか悩んだ そんな……妊娠はしたくないけどピルは飲みたくない 子供がいるなら、殺すなんて…結局は私には出来なくて手を振り払っていた 『 酷すぎる……私は、もし……今いるなら、流産したくないし……子供は、私が引き取る。貴方なんか渡すものか! 』 性格屑で、自分勝手だし、監視と監禁して楽しんでるような男に涙を流して睨めば、手から外れた薬を見てから、彼の口角は吊り上がった この人は……最初から言わせるつまりだったんだ 「 ほぅ?なら、今腹にいたら産むんだな? 」 『 っ!!酷い!!騙した!詐欺師!! 』 「 渡したくないなら、別れないことだ。俺は離婚する気なんてない 」 そんなのどうでもいいと上半身を起こしてクッションを掴み叩いていれば、片腕で防いでる彼は何故か楽しげに笑っては 腰に腕を回し引き寄せた 『 っ……! 』 頬に当たる口付けに抵抗力を失えば、耳元で囁かれた 「 ほら……一緒に晩御飯を食べよう。ルイ 」 この人は……酷い男なのに…触る手に優しさがある だから、もっと悲しくなるとクッションが手から落ち肩口へと顔を埋めた 『 ……なら、私を愛してよ……好きになって…… 』 とても重くて鬱陶しい女みたいな言葉に、自分でも嫌になりそうだと思うも声は震えていた 子供を身ごもっても愛情がほしい、そう願えばその腕は頭へと触れ撫でてきた 「 御前と結婚して子供が欲しい為に、俺は今まで相手が居ない……。御前が俺を好きになってくれ…… 」 『 !! 』 そんな言葉って……私の方が好きじゃないみたいな 確かにまだ好きではないけど… 出会う順番から全て可笑しいと思いながら、その身体を抱き締めていた 『 …オムライスなんて、反則だ…許さないし! 』 「 許さなくていいから。沢山食え 」 その日の晩御飯はふわとろ玉子のオムライスだった為に、不機嫌も直りかけたのは言えるわけもない 強制的に一緒に風呂に入って、求められるままにキスと触れ合う程度のスキンシップをして寝室に戻れば彼は眠りについた 『 やっぱり……仕事で疲れてるじゃん 』 軽く髪に触れ撫でれば、此方を向いて寝てる表情は疲れが残る顔色をしてる そんな表情を見せないようにしてるなんて 別にいいのに……
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