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その後、水神刑事は被害者の中川三四郎の自宅を家宅捜索した。
本来なら捜査に参加は出来ないのだが、一応捜査本部にも捜査協力をしてもらっていることを告げてあるので、特別に亜久津情児も家宅捜索に参加することになった。
いや、普通はこういう場合、情児の方から家宅捜索に参加させてくれと無理に頼み込み、警察側がそれを渋々認めるパターンが多いようだが、この場合は違う。
情児は、家宅捜索なんて警察の仕事なので、自分には関係ないと思っていた。
大体自分にそんな権限は無い。
だからそんなものに参加することはまずありえないと思っていたのだが、水神刑事が是非にと捜査本部に頼み込んで、無理矢理、情児が家宅捜査する許可を取り付けてしまったのである。
何でそんな余計なことを…
情児は、嬉々とした水神から、家宅捜索の許可が下りた話を聞かされた時、すぐにそう思ったが、しかしわざわざ水神が許可を取ってくれたのに、自分が参加しないというのも悪いような気がした。
正直、情児は全く気が進まないというか、ひたすら面倒にも思えたのだが、まぁ乗り掛かった船だし、自分のためにわざわざ許可を取ってくれたんだから、ここは水神の顔を立てて、参加しようと渋々思ったのだった。
結局その日、情児は水神刑事他捜査陣と共に、中川邸を訪れ、三四郎の部屋に入った。
きちんと片付けられた落ち着いた部屋だった。
書棚には本が多く、数学関係の本から、芥川龍之介や夏目漱石、太宰治などなどの文学書まで、様々な書物が置かれていた。
他にはテーブルの上にパソコンがあり、ソファーがあり、健康器具の類などもあった。
なんてことのない普通の部屋だった。
そんな部屋をわざわざ自分のような門外漢が見に来たことに、情児は改めて場違い感を覚えたが、水神刑事は手馴れた様子で部屋の中のいろんなものを物色したり、繁々と眺めたりして、いかにも家宅捜索という感じの刑事らしい行動を取っていた。
情児は自分の足手まとい感がちょっと辛かった。
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