元リーマンだけど筋トレばっかしてたら超人になったので新幹線止めてみた

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「2億9999万9997、2億9999万9998、2億9999万9999……3億、っと」  日課の腕立て伏せを終え、地面に腕を付いた反動で立ち上がる。 「フンッ!」  気合一閃、全身の筋肉を震動させて汗を吹き飛ばした。  飛び散った汗が壁一面に張られた鏡に弾け、滴る。  俺の名は照屋万吉。沖縄出身の元リーマンだ。  就職を期に大阪に来て独り暮らしをしていたが、ブラック企業で体を壊して退職、リハビリのために毎日自宅で筋トレをして過ごしていた。 「インターバルと食事が終わったら、ランニングにでも行くか」  実家から送られてきたソーキソバをムシャムシャやりながら、自分の肉体を鏡で確認する。  退職当時どころか、実家にいた頃よりヘルシー、いや、マッシブになった気がする。 《本日正午頃、東京都世田谷区の路上で自称ダークライの34歳女性が刃物を振り回す事件が発生しました―――》  部屋の鬼門に据えたテレビからは、いつも筋トレのBGM代わりにしているニュースが流れていた。  全国区のニュース・キャスターが読み上げる事件は俺の生活とは無関係にローカルで、ひとつもマイ・マターじゃなかった。だからこそ、俺は俺のマターに集中できる。  とは言え、今日のノルマは終わりだ。テレビはもう黙ってくれて構わない。  電源を落とそうとテレビのリモコンを探すが……恐らく、シャトルランをしていた時に踏み砕いたのだろう。電池から漏れた水銀に沈む、プラスチックと金属の破片が転がっていた。  苛立った俺は、手元にあったダンベルをテレビに投げ付けた。  ガシャニャン  と液晶の割れる音がして、テレビは狙い過たず沈黙した。
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