コンビニで売ってる消しゴムが残り一個だった話

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 裕翔は時々うちに遊びに来るようになっていた。  ご飯を食べて、他愛ない話をして、お風呂に入って、セックスして、それから泊まってくのが月に3回くらい。  僕のことをやたらと好きだという彼は今までにないくらい幸せそうににこにこしていた。そんな彼のことが僕も好きだった。  ちょっと無愛想だった彼が幸せそうに笑うのが嬉しいのだ。  僕らは上手くいってた。同性のカップルで、周りには秘密の関係で、それでも二人だけで幸せに上手く生きてたと思う。 「……何だよ、これ」  ああ、と頷く。  そういえば今日は裕翔が来る日だった。 「今日の帰りにちょっとね」 「はぁ!? 人間だろ! 生きてる女の子だ!」  はは、と笑い声が漏れた。  目を見開いて声を荒げる彼の姿が珍しくてつい笑ってしまった。 「安心して、浮気じゃないよ、何にもしてないからね!」  彼が信じられない、という表情をしている。  部屋の片隅に両手、両足をそれぞれ縛られた制服の女の子が放置されている。その上、彼女は目隠しをされ、布を噛まされている、  つい先程目覚めたばかりの彼女は状況も把握できずにしくしくと泣いていた。 「……離してやれよ」 「いいよ」  彼に言われてすんなり了承した。あまりにもすぐに返答したからか、驚く彼をよそに彼女の口から布を外し、目隠しを外す。怯えている彼女と目が合う。 「……ぁ、コンビニの……」  声が震えている。ぼたぼたと涙が流れてた。喚いたり叫んだりする様子はなかった。  僕が後ろから灰皿で殴った頭が血で赤くなってたけど、もう止まってるみたいだった。  きょろきょろと目だけで辺りを見回している。僕が口を開くとびっくりしたのか身を縮こませていた。
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