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「そうだ、君の荷物は全部捨てたんだけど、これはせっかく買ったからね。ちゃんと使わないとね」
そう言いながら消しゴムを彼女の前に置く。一瞬だけ視線が下がったが、再び僕を見上げた彼女がふるふると首を横に振る。
「……わ、私、誰にも、何にも、いいません……だから、帰してください……」
うーん、と頭をひねる。上手く話が伝わらない。
「ま、いいや。ご飯作ってくるね。今日はなすび食べたいと思ってたんだよねー。麻婆茄子作るやつ買ったんだよ」
ふんふんと歌いながらキッチンへと向かった。
部屋を出る前にちらと裕翔を見ると彼は泣いてる女の子をじっと見つめてた。
○○○
料理ができたので部屋まで2人を呼びに行くと、女の子はさっきより落ち着いた様子だった。
「外しちゃったんだね」
女の子の手足の拘束は外されていた。でも、諦めたのか、何かあったのか、逃げ出す様子はなかった。
二人をリビングに案内してテーブルを前に座ってもらう。ダイニングテーブルじゃないから、ラグの上に直接ペタンって座る。
女の子にはあざらしの箸、裕翔にはペンギンの箸、それぞれを渡す。それから、ぱちりと手を合わせる。
「いただきます」
ご飯はまだ炊飯器の中にある。一合くらいはあるはずだ。
「ご飯、足りなかったらおかわりしていいからね。多かったら残していいよ」
炊飯器のご飯、残ったら冷凍しよう。
明日はチャーハンにしようかな。
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