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十
ポケットに飴を入れて、いつかりりぃに渡そうと思ってから軽く二年が過ぎていた。
飴は都度食べては新しいのをポケットに入れて朝に備える。飴の力を借りて、何とか彼女と話すきっかけを作りたかった。
でもこうして話すことができたのは、やっぱりこの飴のおかげなのかもしれない。
それに今日、りりぃの気持ちも初めて知った。十八歳の俺を恋愛対象として見てくれてたんだってことを。だからしっかり彼女に伝えなきゃいけない。
「アナベルは俺の本気です。好きって気持ちと、花そのものの意味を二つ込めてます」
りりぃは、アナベルの入った紙袋ごと抱きしめていた。
「俺、ずっとお礼言いたくて。恋する楽しさを教えてくれてありがとうって。だから、その……ありがとうございます!」
「煌くん、そんな」と言う彼女の瞳は潤んでいるように見えた。
「俺が高校を卒業するまであと半年くらいあるけど、それまで待っててもらえませんか? せめて同じフィールドに立ちたい。友達として接してもらえたら嬉しいけど、今まで通り挨拶だけでもいいです」
今、俺はそれだけでも幸せだから。
「卒業したその足で君を迎えに来ます。その時もう一度俺、君に告白する。だから今、本気でアナベルを受け取って下さい」
りりぃは「はい」と答えた。
恋に臆病だった自分に、さよならを告げることができた気がした。
彼女の潤む瞳に答えたかった。精一杯の気持ちを素直にストレートに。
「嬉しいです。ありがとう、煌くん」
「りりさん、よろしくお願いします」
俺が彼女の名前を口にすると、みるみるうちにりりぃの頬が淡く色づく。そんな彼女をとても愛おしくて大切にしたいと思った。
曇ひとつない空が視界に入る。
雨宿りをしていた俺達は、いつしか雨がやんでいるのに気づき建物から出た。真っ青に色づいた空に、うっすらと七色の虹が重なる。
次に会ったときは、りりぃより先に「おはよう」って言おう。勇気をくれた君の笑顔に会いにいく。
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