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 ポケットに飴を入れて、いつかりりぃに渡そうと思ってから軽く二年が過ぎていた。  飴は都度食べては新しいのをポケットに入れて朝に備える。飴の力を借りて、何とか彼女と話すきっかけを作りたかった。  でもこうして話すことができたのは、やっぱりこの飴のおかげなのかもしれない。  それに今日、りりぃの気持ちも初めて知った。十八歳の俺を恋愛対象として見てくれてたんだってことを。だからしっかり彼女に伝えなきゃいけない。 「アナベルは俺の本気です。好きって気持ちと、花そのものの意味を二つ込めてます」  りりぃは、アナベルの入った紙袋ごと抱きしめていた。 「俺、ずっとお礼言いたくて。恋する楽しさを教えてくれてありがとうって。だから、その……ありがとうございます!」 「煌くん、そんな」と言う彼女の瞳は潤んでいるように見えた。 「俺が高校を卒業するまであと半年くらいあるけど、それまで待っててもらえませんか? せめて同じフィールドに立ちたい。友達として接してもらえたら嬉しいけど、今まで通り挨拶だけでもいいです」  今、俺はそれだけでも幸せだから。 「卒業したその足で君を迎えに来ます。その時もう一度俺、君に告白する。だから今、本気でアナベルを受け取って下さい」  りりぃは「はい」と答えた。  恋に臆病だった自分に、さよならを告げることができた気がした。  彼女の潤む瞳に答えたかった。精一杯の気持ちを素直にストレートに。 「嬉しいです。ありがとう、煌くん」 「りりさん、よろしくお願いします」  俺が彼女の名前を口にすると、みるみるうちにりりぃの頬が淡く色づく。そんな彼女をとても愛おしくて大切にしたいと思った。  曇ひとつない空が視界に入る。  雨宿りをしていた俺達は、いつしか雨がやんでいるのに気づき建物から出た。真っ青に色づいた空に、うっすらと七色の虹が重なる。  次に会ったときは、りりぃより先に「おはよう」って言おう。勇気をくれた君の笑顔に会いにいく。  
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