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 突然の大きな地割れという公園の異変に周囲がざわめく中、二人は公園を抜けた。  二人は注意しながら人込みを移動したが、新たな追跡者はいないようだった。 「何とか……なったみたいね。さっきはありがとね、水沢くん」  奈美は地割れ発生時に助けてくれたことに感謝の意を示した。 「あ……全然いいよ。その後の光の球みたいのがないとあの地割れに落ちてたわけだし」 「それもそうね。私の力がどっちみち目覚めるなら一人でも助かったのかも」  腕組みをしながら奈美は何度か頷いた。そう言われてしまうと何も言えなくなる奏に奈美は微笑んだ。 「まぁ、私の力って都合よく出てくるわけじゃないしね。あの助けがあったから生まれたかもだし、やっぱ、ありがとね」 「う、うん……」  なんだか複雑な気持ちだったが、奏は納得することにした。 「それにしても、なんで僕は狙われるんだ? その花言葉の力ってやつが関係してくるわけ?」 「ご名答」  奈美は右人差し指で奏の顔を指差した。 「カキツバタの花言葉ってさっき言いかけたと思うんだけど」 「ああ、そうだったね」 「『幸せは必ずくる』っていう花言葉なの」  不思議な響きだった。どこか遠い記憶の中で聞いたような響きだった。 「……なんだか能力のイメージがしにくいね」 「そうね。ピンとこないわよね? 伝え聞いた話だと、貴方の能力は、味方に幸運をもたらすものらしいわ」 「幸運? しかも味方に? 僕じゃなくて?」 「私も詳しくは知らないんだけど……。それで、貴方の能力を手に入れたいのが追跡者の奴らなのよ。自分たちの計画、世界バランスへの干渉を成功させるためにね」 「さっき言ってた話か……。でも、なんで急に狙われはじめたんだろう? 僕が本当にそんな味方に幸運をもたらす奴なら、とっくに狙われていたはずなのに」 「ファルフジウムの能力者が、貴方を千里眼で見つけたと言ったからよ」 「ファル……なんだって?」  奏には聞き覚えのない花の名前だった。
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