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中庭のミケランジェロ
「たすけて……」
そんな声が聞こえたのは、放課後の美術室に足を踏み入れた時だった。
謎の声の出所を探して顔を巡らせると、ふと、美術室の隅の床の上で何かが蠢くのが目に入った。軍神マルスの半身を象った真っ白い石膏像。
その下で手足をばたつかせているセーラー服の少女。
「だ、大丈夫か! しっかりしろ!」
慌てて駆け寄り石膏像を抱え上げると、近くの床に倒れないよう置き直す。
「うう……重かった……」
下敷きになっていた少女は、服についた埃を払いながら立ち上がると、俺に向き直りぺこりと頭を下げる。
襟元をアピールするような赤いスカーフの色からして、俺より一学年下の一年生らしい。
「あの、助けていただいてありがとうございます! あなた様がいらっしゃらなければ、危うくあのまま圧死していたところでした! マルス様に押し倒されるだなんて魅力的なシチュエーションですけど、さすがの私も石膏像を異性として愛する心は持ち合わせていないので、もうどうしようかと……」
「なんで石膏像の下敷きなんかになってたんだ?」
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