ずっと見守っています

4/8
前へ
/8ページ
次へ
桜の蕾が大きくなり始めた頃、彼女たち家族はよく家にいるようになった。 子どもたちは学校に行っていないようだし、 夫君も仕事に行っていない。 夫君がよくテラスでぼんやり、もしくは思い詰めた表情でタバコを吸う姿もよく見る。 世界中で流行っている、ウィルス。 ここから見える景色に何も変わりないように見えても、世の中は大変なことになっている。 彼女たちの生活も、家にいることが増えたこと以外、一見変わりないようにも見える。 よく話し、よく笑う。 テラスでバーベキューをしたり、リビングでみんな集まって映画を観たり… 彼女は今日も 大きな笑顔で笑う。 しかし、衝突してしまう日もある。 夫君はよく、怒ると彼女が扶養であることを口にする。 「誰の稼ぎで生活できてると思ってるんだ!」 けれど、彼女は1日中家族のために働き、 子ども達の世話すら夫君は全くしない。 誰が外で働こうと、彼女は彼女で働いている。 落ち着けば、それは元の鞘に収まるし、 何事もなかったかのように彼女は笑うし、 夫君の機嫌が良ければ、それをネタにして 自分の中で消化していく。 けれど、今回は違った。 一見元の日常に戻ったかのように見えた。 けれど、僕にはわかった。 彼女がその話をぶり返すことはなかった。 今回、はたで聞いていても、彼の言い方は行きすぎていた。 にもかかわらず、彼はハッキリと謝ることはなかった。 いつも通り話しかけていつもの日常を取り戻そうとした。 彼女はそれに応えながらも、確信をついた話し合いをすることはなかった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加