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桜の蕾が大きくなり始めた頃、彼女たち家族はよく家にいるようになった。
子どもたちは学校に行っていないようだし、
夫君も仕事に行っていない。
夫君がよくテラスでぼんやり、もしくは思い詰めた表情でタバコを吸う姿もよく見る。
世界中で流行っている、ウィルス。
ここから見える景色に何も変わりないように見えても、世の中は大変なことになっている。
彼女たちの生活も、家にいることが増えたこと以外、一見変わりないようにも見える。
よく話し、よく笑う。
テラスでバーベキューをしたり、リビングでみんな集まって映画を観たり…
彼女は今日も
大きな笑顔で笑う。
しかし、衝突してしまう日もある。
夫君はよく、怒ると彼女が扶養であることを口にする。
「誰の稼ぎで生活できてると思ってるんだ!」
けれど、彼女は1日中家族のために働き、
子ども達の世話すら夫君は全くしない。
誰が外で働こうと、彼女は彼女で働いている。
落ち着けば、それは元の鞘に収まるし、
何事もなかったかのように彼女は笑うし、
夫君の機嫌が良ければ、それをネタにして
自分の中で消化していく。
けれど、今回は違った。
一見元の日常に戻ったかのように見えた。
けれど、僕にはわかった。
彼女がその話をぶり返すことはなかった。
今回、はたで聞いていても、彼の言い方は行きすぎていた。
にもかかわらず、彼はハッキリと謝ることはなかった。
いつも通り話しかけていつもの日常を取り戻そうとした。
彼女はそれに応えながらも、確信をついた話し合いをすることはなかった。
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