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「何?知らないよ。」
パパはカーラジオのボリュームの音量を下げる。
ママは内緒噺をするかの様に耳打ちした。
「黒百合は二つの意味の花言葉があるの。一つは【愛、恋】。」
「素敵だね。今度ママに黒百合をプレゼントしようかな。」
聴き慣れないパパのママに向けた甘い言葉と空気のせいで少し、くすぐったくなった私は思わず耳を前足で掻く。
だが、今度はママはパパを驚かせたいかの様な低い怖い声を出して上目使いをしてこう話した。
「もう一つは【呪い、復讐】。」
「え!?」
イメージが対比する意味を表す花言葉にパパは驚きの声をあげた。
「二つの全く違う面があるのって不思議だよね......。」
ママはパパの反応の可笑しさにケラケラ笑って口を手で押さえていた。
......ママ。
私もそう思うよ。
みんな黒百合みたいだね。
パパもママも私も。外から中から、角度によって全く違う面が見え隠れする。
......でも、アイツは違う。
同じ百合でも真っ白な花弁。時折口角を少しあげて、そしてまた何かをむにゃむにゃと味わう様に動かす。全ての動きが何故だろう。純粋で尊い。
.........そう、アイツはとても、とても白い。
ミルクの匂いがする車内。アイツの体から漂って来る甘い香り。
クンクンと鼻を鳴らし、私は起き上がり、
私は【愛】の方の気持ちを込めてアイツの頬をペロリと舐めた。
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